「全」てを「知」る

更新日 Latest Developments on 2012年 6月 29日

By Zac Hill

Zac is a former game designer/developer for Wizards of the Coast and was the lead developer for Dragon's Maze. His articles have appeared in The Huffington Post, The Believer, and on StarCityGames.com. Currently he serves as the chief operating officer of The Future Project, a nonprofit education initiative, and holds a position as a research affiliate in the MIT Game Lab.

 基本的に、どんな前振りや説明をしても、このカードのインパクトが薄れてしまうだろう。なので、今まさにこれを披露してどんなものであるかはっきりさせよう。

 私はマジック2013のリード・デベロッパーとして強迫観念一歩手前の量の注意を捧げてきた。チームの残りのメンバーと違い、私はこのコラムの実権を握っており、私の関わっていることを好きなだけ大きく書くことができるので、これは少しフェアじゃない。このセットをこれほどすごいものにした――《全知》のような――カードは、皆のありえないぐらいの時間と努力無しには起こり得なかった集合的なブレインストーミングの成果だ。皆のチームでの詳細な役割は後の記事で説明するが、それよりも今は、トム・ラピル/Tom LaPille, イーサン・フライシャー/Ethan Fleischer, マックス・マッコール/Max McCallライアン・ミラー/Ryan Miller、そしてマーク・ゴットリーブ/Mark Gottliebに歓声を送りたい。彼らの努力がこのセットを作り上げた。

 私は《全知》が作られた正確な瞬間を覚えているので、今それを発表しようと思う。我々は部屋の中で座り、青の神話レア用の大きなインパクトを持ったコンセプトを求めてブレインストーミングを行っていた。マジック2013は基本セットなので、可能な限り多くのトップダウンの共鳴や直感的な影響をカードに詰め込みたかったのだ。我々は基本セットが魅惑的な、天使、ドラゴン、デーモンなどを提供することで素晴らしいものにしようとする傾向にあったことを理解しており、そして、多くの未開発な部分が典型的なファンタジーの概念にあることに気がついた。私は誰がホワイトボードにこのカードを書きとめたのか正確には覚えていないが、しかしそれは前へと飛び跳ねて、完全にアテナか何かのようだった。その会議から直接ブースターパックへ――名前、コスト、能力、などいろいろが持ち込まれたし、既にイラストの大枠まで決めていたのだ。どのカードにまだ没頭しようというなら、多くの軸に沿って作用する――少なくとも、私にとっては。それはマジックの基本メカニズムと自然にバランスを取りながら基本的なプレイヤーの要望を満たす芳醇なトップダウンのデザインなのだ。

いつでもどこでも、ってとこね

 私にとって基本セットの神話レアは、一つ無くてはならないことがある:ひらめきだ。エキスパンション・セットでは、環境の配慮や、ダイナミックな相互作用、物語のポイント、その他全てに考えを巡らせる余地がある。しかし基本セットでは、神話レアを剥いたときには息を呑ませるものであるべきだ。それは何かを約束するべきなのだ。君の心の中にオレンジレッドのエキスパンションシンボルを誇ることは疑いないだろう。具体的にこれにどう取り掛かるかは様々だが、当然ながら、基本セットの神話レアをブースターパックから開けたプレイヤーはルールテキストを上回る体験をしているはずだ。そのカードはプレイヤーのひらめきに火をつけるべきなのだ。

 私にとって、《全知》はまさしくそれそのものだ。君はカードを読み、そのカード名はそれのメカニックとかみ合い、そして君は探求を始める。 もし私が常識の範疇に当てはまらなかったらどうする? もし私が全てを知っているとしたら? もし私がマナの集合や力の蓄積を覆し、自らの意識の奥へと飛び込むことができ、ルーンの記憶を発動させるか、命の呪文の儀式に耳を傾けるなら? もし私が考えることもなく、全てが一瞬で起こったとしたら? 私はどんな大惨事をもたらすだろうか? どんな領土を作り出せるだろうか? どんな光景を共に見られるだろうか? どんな存在を召喚できるだろうか? どんな壮大な実験を世界に解き放つだろうか?

全知》 アート:Jason Chan

You hear those promises, and that spark ignites, and you're excited to venture forth and explore.

 もちろんこういうカードは万人向けじゃない。マナ・コストはとんでもなく重いし、これ単体ではゲームに勝つことはできない。これを機能させるためにはいくつかの努力が必要だ。これはトーナメントの定番ではないし、島をプレイするデッキ全てに詰め込もうとするものでもない。だが重要なのはそこではない。私にとって、マジックのカードから得られる物の多くは、君達がそれらをスリーブに入れるずっと前にある。この場合においてもやはり、可能性の問題なのだ。私が考える良い基本セットの神話レアとは、心の中でどこかへ行く発見のパターンの過程を始動させるべきものだ。それは君に何かを示し、想像力をかき立てるだろう。それは経験から意味づけをする助けになるはずだ。すでに気付いている何か、たとえば君の知っている比喩や文化の一面を強調する形で、理解するのではなく感じられるようにすべきである。

君はルールの下で自分を冷静だと思える

 私はこの見出しを参照するのがとても恥ずかしい、だがそんなことは取るに足りない。

 一つのレベルにおいて、我々は全知のようなカードで本能的なインパクトを君のはらわたに与えようとしている。しかし、速やかにその後君がゲーム部分のどこにも受け入れられなければ、それは多くの場合問題ではない。コンセプトは魅力的だが、たとえそのコンセプトに結びついたものであっても、メカニズムが使い物にならない場合、失望を感じたままになる。分かりきったことだが基本的に、あらゆるゲームで、ルールが定められている。そして人間は本当にルールを破るのが好きなんだ。《全知》のコンセプトが魅力的なである全ての根拠は、我々が皆日々苦労している制限から解放される能力を表しているという点だ。どれほど我々が真実を求めても、全てを知ることはできない。我々は、情報へのアクセスを制限されている。脳の容量、意識の限界、理解力の頂上によって制限されているのだ。地球で最も賢い人であってもごくごくわずかな一部しか知ることはできない。それは避けることのできない、逃れることのできない、越えることのできないルールなのだ。

打ち寄せる水》 アート:Steve Prescott

 従って、ゲームの仕組みに対する感覚の経験を捕らえるために、我々はルールを超越する方法を考え出さなければならないだろう。そして、マジックのゲームで逃れられないルールとは、全てにコストがあると言うことだ。それは軽いかもしれないし、重いかもしれないが、何かをする前にコストの支払いをしなければならないということは間違いない。しかしながら全知は君に、「いえ、結構です」と言う方法を提供してくれる。土地をタップしたり力を引き出す無駄な手順を経る必要がない。なあ、友よ。私はもうすでにその材料を知っている。君たちのほとんどが、子供のころ駆け回った牧草地や、槍を失って《スラーグ牙》に追われたときに駆け上った樹に戻ったりしなければならないということを知っているが、そんな苦労している君たちとは関係なく、私は鼻歌交じりにレモネードを飲むことができることを知っている。なぜなら、私はそれを知っているから、だ。

 マジックにおいて、ゲームの基本となるメカニズムを回避する方法はそう準備されていない。そういう方法がある場合、それだけで興奮できるものだ。何にでも10マナという値札を付ければいいという話ではないが、無限の可能性にはそれぐらいの価値があるとは思わないか?

全てを望み、そしてそれを行う

 は決して安いとは言わない。しかし一方では、君はまた何にでもコストを払わなければならないだろう。君は我々がどんな取引を持ちかけてると言う?

 ここマジック開発部では、我々はコストの大ファンだ。我々はコストを使って恐ろしい数のカードのバランスを取ってきた(知らなかったろう!)。だから、突然「ヤッホー!『支払う』ってことは......」なんてカードを作る場合、それをとても慎重に扱わなければならない。

グリセルブランド》 アート:Igor Kieryluk

 幸い、マジックの自然な構造から、このようなカードを戦場に出すために君が何を行わなければならないかを優れた精度で予測することができる。

 例えば最初の手札の7枚を引いて、それでゲームをプレイする。土地をプレイして、6枚のカードを残して「どうぞ」と言う。次のターンカードを引き――今手札7枚――土地をプレイして(手札6枚)クリーチャーを唱える(5枚)。以後毎ターン、もし土地を引いたらプレイして、ターンごとに呪文を一つ唱える。君の手札の数はその繰り返しごとに一枚づつ減っていく。これは7ターン目のプレイと8ターン目のドローで君がガス欠になることを意味している。

 明らかに全ての、あるいはほとんどのゲームでこんな風にプレイはしない。しかし一般的なプレイのパターンで何が起こるか思い浮かべることができる実例だ。

 3ターン目に何も唱えないとか、2ターン目に《不屈の自然》を唱えるとかすると、君は多くの重要な結果に到達することができるようになる。9マナのフラッシュバック・コストが8になるとどれぐらい違うかのように(フラッシュバックの恩恵は何もしないかわりに与えられるものであり、君が自然にガス欠するまでに並べる土地は8枚だ)。

 なぜならスタンダードには一枚で2マナ以上のマナを生み出すカードは、この記事で出したものも出していないものも含めて、限られた数しか存在していない。私は《全知》がそのマナ・コストに単色のマナ・シンボルを3つ含むことに注目するが、ともあれ我々は君が《全知》を唱えるとき、ゲームを決められるようなカードをどれだけ手札に取っておくことができるかを推論することができる。我々はその数を増やするためにそれを評価することができる。君は間違いなく序盤のターンを土地を増やしたリカードを引いたりすることに費やすだろう。そうなると、対戦相手はより多くの圧力をかけることができるようになる。そして、起こりえないほど重過ぎもせず、努力なしで達成できるほど軽過ぎもしない、可能性が最良になる大体のコストを設定することができるようになった。

グリセルブランド
Crush of Wurms

 いくつもの《全知》デッキのプレイテストをした結果、10マナに到達するためにはいろいろな努力が必要だが、環境に合えば、見返りは間違いなく価値があると言える。

 もちろんこれはスタンダードに限った話で、レガシーのデッキでは《実物提示教育》でこれを出して楽しく過ごせる。まあ、《グリセルブランド》はより良い選択かもしれないし、あらゆるカジュアル・フォーマットでは10マナへ加速することは気にならないが。しかしながら、覚えておいて欲しい、《全知》の効果で起こるのは、手札のカードをただにするだけだ。従って《ヨーグモスの意志》、《瞬唱の魔道士》、《ワームの突進》のフラッシュバックのためにはまだ少し働かなくてはならない。つまり、全てのものをただで手に入れているとはいっても、少しは働かなくてはならないということだ!

ロンとスティーブは知ったかぶり

 私は皆がこのカードを掘り下げてくれることを望む。私はこの記事で多くの方法で厄介なことを実現してきた。ここにすごいと思うカードがある、また、ここになぜこれがすごいと思うかの理由とそれをすごいものにしようとして慎重に設計した軸がある。それは、例えば「見て! 面白い理由はここだよ!」と冗談が何故面白いかを説明するようなものだ。

 それは、カーテンの後ろを覗き見しすぎるよりも危険だ。もちろん、具体的に言うと私にとって《全知》より重要なのはしかし、より広いポイントだ。私はM13が我々の神話レアを使う新しい約束の説明と作り出す経験の説明になると信じている。これを定量化するのは難しいが、しかし我々の仕事には多くある。私がとても強く感じるのは、君がパックを開けてこのようなカードを引いた場合、それはすごくて、価値があって、可能性を吹き込まれたように感じなければならないということだ。そして、試してみるのがエキサイティングなことをするものでなければならない。

 私が言っていることはこうだと思う。神話レアはただのカード以上のもので、最高の経験を表しており、ゲームをプレイすることで到達することができる感動的な報酬の頂点だ。他の普通のスロットは多くの豊かさと相互作用でマジックを偉大にしている。しかし基本セットの神話レアは大きなインパクトと自己完結をしていなければならない。それは単体で意味を成しているべきなのだ。それを感じて欲しい。

 君はどう思う?聞かせて欲しい。

 ありがとう。

Zac (@zdch)


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