こぼれ話:『ゲートウォッチの誓い』その2

更新日 Making Magic on 2016年 2月 8日

By Mark Rosewater

Working in R&D since '95, Mark became Magic head designer in '03. His hobbies: spending time with family, writing about Magic in all mediums, and creating short bios.

 先週、私は、『ゲートウォッチの誓い』に関する一問一答記事を始めた。質問が非常に多く集まったので、記事1本で終わらせるのは無理だと判断し、2本立てにすることにした(先週の記事をまだ読んでいない諸君は是非読んできてくれたまえ)。ということで、さっそく始めよう。

 《ゴブリンの先達》のような定番の上陸カードを再録しなかったのはなぜですか?

 『戦乱のゼンディカー』のデザインを始めたとき、我々は全ての再録できるカードを洗い出し、新セットで使えてプレイヤーを興奮させるもののリストを作った。その後、そのリストをデベロップとクリエイティブに提示したのだ。デベロップはパワーレベルの上で明らかに問題になるカードを取り除き、クリエイティブはフレイバーが世界観に合わなくなっているものを取り除いた。その後、再録できるカードを何枚かファイルに加えたのだ。

 一般論として、前回の上陸カード、特にプレイヤーが再録を望むような強力なカードは、速さの上で問題があった。上陸メカニズムは大人気だったが、前回上陸を作ったときにそのアグロさにおいて我々は間違いを犯していたのだ。結果として、リミテッドやスタンダードを激しく高速化させることになってしまった。それ以降、我々はリミテッドやスタンダードをいくらか低速化させていて、前回成功を収めた上陸カードのほとんどは環境に適さないものになっていたのだ。最終的に、それらの上陸カードの再録のうち何枚かはファイルから取り除かれることになった。

 《闇の掌握》はなぜコモンからアンコモンになったんですか?

 デザインとデベロップが全体のパワーレベルを正すために最も使う道具が、「開封比」と呼ばれているもので、平均的なブースターを開封した際に特定の要素が何枚含まれるかを表す数字である。例えば、アーティファクト関連のセットを作るとしよう。開発部が意識することの1つが、アーティファクトの開封比がいくつか、である。ブースターを開封したとき、平均して何枚のアーティファクトを手にするのか。2枚、3.5枚、6枚もあり得る。

 これが非常に重要なのは、トレーディングカードゲームの本質として、ユーザーがパックから手にするカードが何なのかは開発部にはわからないからである。しかし、数学的に可能性を計算すれば、平均的なプレイヤーが手にするものが予想でき、それに基づいて環境を定めることができる。《闇の掌握》がコモンでなくアンコモンになったのは、コモンだと(黒のクリーチャー除去の)開封比が高くなりすぎるからである。レアリティを変更することで、開発部は開封比を調整でき、従って全体としてのパワーレベルを調整することができるのだ。

 《コジレックの審問》は何回ファイルに入ったり取り除かれたりしましたか?

 最初はファイルに入れてあって、デザインのかなりの期間はそのままだった。私の記憶が正しければ、デヴァイン(デザインとデベロップの重複する期間)かデベロップの初期のうちにデベロップが取り除いて、それ以降戻っていないはずだ。取り除かれるまで入っていて、その後、取り除かれたままになったのだ。

 『戦乱のゼンディカー』と比べて、『ゲートウォッチの誓い』に配分されたストーリーが多すぎると思いませんか?

 ストーリーのどの部分をどのセットで語るかというのは、それぞれのセットがユーザーに対して持つ役割による部分が大きいと考えている。第1セットは導入(『戦乱のゼンディカー』の場合は再導入)だ。世界を見せて、プレイヤーにその環境になじませるのが役割である。したがって、第2セットに比べて物語の部分はずっと少なくなる。また、第2セットはカードの枚数も少ないので、その差は実際以上に大きく感じられることになる。

 それは正しい手法か、というのはいい質問で、開発部(特にストーリー・チーム)が現在色々と考えているところである。プレイヤーは、新しいセットが登場したときに大量の物語全体を吸収することになることも踏まえると、これは非常に複雑な問題になる。

 さて、現時点で、質問に答えておこう。多すぎるとは思っていない。

 誓いサイクルの最後の1枚はどうなったんですか?(黒の)

 サイクルを作るつもりのときもあれば、そうでないときもある。誓いは、プレインズウォーカーがゲートウォッチに参加することをカードを通して表すために作られたものだ。『ゲートウォッチの誓い』では、ゲートウォッチを結成した最初の4人の誓いがカード化されている(セット名を見ても、これが重要なのはわかるだろう)。誓いが4枚しか存在しないのは、ゲートウォッチに参加しているのが4人だけだからである。黒以外の各色に1人ずついるが、それはただの偶然に過ぎないのだ。

 勤勉なる読者諸君は、私が美学の信奉者であり、不完全なサイクルを作ることを好まないということを知っているだろう。この誓いは、ストーリーを描こうとする上のキーポイントを表す、重要な例外の好例である。黒の誓いが存在しないことは注目を集めるということはわかっていた。しかし、黒のプレインズウォーカーはゲートウォッチに参加していないので、黒の誓いは必要ないのだ。物語も、プレインズウォーカーがゲートウォッチの一員となったことをメカニズムを通して示す明瞭な方法という大きなメカニズム的構造も保ったままに、黒の誓いを作る方法はありえないのだ。

 白のエルドラージ、つまり《変位エルドラージ》の意味するフレイバーは何ですか? 『戦乱のゼンディカー』では白にはエルドラージはいなかったのに、なぜ今回はいるんですか?

 『戦乱のゼンディカー』が世に出たとき、なぜ白の欠色カードは存在しないのかという質問を大量に受けた。メカニズム的な理由か、クリエイティブ的な理由かという質問だったが、実際はそのどちらでもなかったのだ。成り行きを説明しよう。『戦乱のゼンディカー』のデザインでは、5色全てに欠色カードを作った。エルドラージがゼンディカーのあらゆる性質を弄り、何らかの作用で色マナを吸い出してしまうことを表していたのだ。

 デベロップ中に、色のメカニズムに関して大きな変化が加えられ、ゼンディカー側のメカニズム(特に覚醒と結集)が白に割り振られた。デベロップ・チームはそれらのカードを入れるための場所を作らなければならず、白の欠色カードは少しずつ減らされていった。白の欠色カードを避けようとしたのではなく、単純に数の問題だったのだ。白の枠が足りなかったのだ。クリエイティブ・チームは、白の欠色クリーチャーが存在しないことの理由付けを行っていない。なぜなら、それは故意ではなかったからだ。

 イーサン(・フライシャー/Ethan Fleischer)は、『ゲートウォッチの誓い』のリード・デザイナーとなって白の欠色カードをセットに入れることを決めた。そのために、彼は無色の起動コストを持つ欠色カードのサイクルを作ったのだ。再び枠の問題で白の欠色カードは削られることになったが、このサイクルは何とか残り、イーサンは1枚だけとはいえ白の欠色クリーチャーをブロックに入れることに成功したのだった。

 無色(紫色の)カードがこんなに少ないのはなぜ?

 「無色関連」メカニズム・テーマは、開発部語でいう「A/B型デザイン」である。つまり、2種類の構成要素からなっている。1種類目が、何かを生成するカード(A型カード)で、2種類目がそれを参照するカード(B型カード)である。通常、A型カードはそれだけでもゲームに関連する何かができるので(無色マナに関して言えば、呪文を唱えるために使えるマナを生み出すことができる)、単体でも存在できる。一方、B型カードは充分なA型カードがなければ役に立たない。

 デザイン上、またデベロップ上、プレイヤーはA型カードを単体で使えても、B型カードはA型カードなしでは使えないので、A型カードのほうがB型カードよりも大量に必要になる。従って、B型カードを作る枚数に関して我々は非常に慎重な立場を取るのだ。

 敵対色の2色土地がないのはなぜ?

 ここで問われている「2色土地」は『戦乱のゼンディカー』に存在した友好色の「バトルランド」のことだと思う。『ゲートウォッチの誓い』に敵対色バトルランドを入れるかどうかについては議論があったが、スタンダードに10種類のバトルランドがあっては管理できないとデベロップが判断したので、我々は敵対色バトルランドを入れないことにした。

 次のセットに黒のプレインズウォーカーの誓いカードは入りますか、それともゲートウォッチだけですか?

 誓いカードが作られるのは、ゲートウォッチに参加したときだけだ。例外はない。

 なぜ誓いは伝説のカードなんですか? フレイバー的な意味だけですか?

 最初に誓いをデザインした時点では、伝説のカードにはしていなかった。だがそれは伝説のカードであるべきでないと判断したからではなく、どうすべきか考えていなかっただけだ。その後、デベロップのプレイテスト中に、複数の誓いが戦場にある状況でいくつかの問題が発生した。確か、ガヴィン・ヴァーヘイ/Gavin Verheyが伝説のカードにすべきだと提案してきたのだと思う。フレイバー的にもふさわしく、同じ誓いが複数戦場に並ぶことを防ぐのはデベロップ的にも改善されることだった。

 {C}以外に、『ゲートウォッチの誓い』から後にまで採用されるものはありますか?

 現時点で『ゲートウォッチの誓い』から常磐木になる予定のものは、新しい無色マナ・シンボルだけである。

 無色マナ・シンボルが開発されていたなら、なぜこれまで導入されていなかったのでしょうか(『マジック・オリジン』のペインランドなどで)

 無色マナ・シンボルの変更を決めた時点で、それを『戦乱のゼンディカー』で導入するか『ゲートウォッチの誓い』で導入するかについてかなりの議論が起こった。

『戦乱のゼンディカー』派

 通常、我々が今後使い続けていく新しいものを導入する場合、ブロックの最初に導入している。例えば、速攻や警戒、格闘などのキーワードはすべてブロックの最初に導入された。そうすることで、同じ働きをするのに見た目が違うカードが同じリミテッド環境内に存在することを防ぐことができる。例えば、どのセットに入っているトークン・カードを使うかでエルドラージ・末裔の見た目が変わってしまう。

『ゲートウォッチの誓い』派

 待つべきだという意見には2種類あった。1つ目が、無色マナと不特定コストの違いは難しいので、説明が楽になるようなメカニズム的違いが発生するまで待つべきだというもの。2つ目が、『ゲートウォッチの誓い』の派手な新要素なのだから、先に導入してしまうとこの派手さが薄れてしまうというものだった。

 開発部を文字通り二分する論争があった(私は『戦乱のゼンディカー』派だった)。しかし、全体で話し合い、そして『ゲートウォッチの誓い』まで待つことに決めた。リミテッドでは奇妙に見えることになるが、それだけの価値はあると判断したのだ。

 なぜ、いくつも常磐木な変更をした『マジック・オリジン』で導入しなかったのかという問いの答えだが、単にその時点ではまだ導入することが決まっていなかったからである。

 なぜ、マーフォークやゴブリンやエルフといった部族へのサポートがないんですか?

 ブロックが部族テーマやサブテーマを持っていない限り、ほとんどのブロックでは扱う部族は1つだけである。『戦乱のゼンディカー』ブロックにおいて扱われる部族は、同盟者である。

 《牙の贈り物》は開発中〈象変化/Turn to Elephant〉でしたか?

 そのカードのデザイン名は〈退化/Devolve〉で、クリーチャーを赤のトカゲにするものだった。

 双頭巨人戦のイベントは流行りますかね?

 プレビュー第2週で語った通り、ゲートウォッチの結成に焦点を当てるため、我々はチームワーク性を持つメカニズム(怒濤、支援、盟友)をデザインすることにした。怒濤と支援はチーム戦でも非常に有用なものになった。より良い双頭巨人戦環境を作れると判断した我々はブランド・チームや組織化プレイと相談し、『ゲートウォッチの誓い』発売に合わせていくらか双頭巨人戦に焦点を当てるようにするのは面白いとなった。これが、プレリリースで双頭巨人戦を推していた理由である。

 現状の流れを大きく変えるつもりはないが、もし双頭巨人戦を楽しんでいるなら地元の店舗に伝えてもらいたい。プレイヤーが興味があると知れば、店舗レベルでイベントを開催することは可能だからである。

 「誰かの誓い」サイクルは『ゲートウォッチの誓い』独自のものですか、それとも他のプレインズウォーカーがゲートウォッチに参加したときにも作られますか?

 他のプレインズウォーカーがゲートウォッチに参加したら、誓いカードが作られることになる。それができるようにデザインされているのだ。

 プレインズウォーカーはスーパーヒーローみたいなものだとずっと言っていましたが、いよいよ明らかになってきましたね。でも、なんでチームなんですか?

 アベンジャーズやジャスティス・リーグが存在するのと同じ理由だ。何度も話してきた通り、プレインズウォーカーは完全にスーパーヒーローの類型に当てはまっており、そのジャンルでチームは大きな意味を持っている。さらに、プレインズウォーカーが毎回毎回偶然出会うのは変だと言えるところに達している。最後に、ゲートウォッチの存在によってクールな物語を作ることができると思う。それぞれ特徴や計画を持った登場人物が干渉し合うことで、面白い瞬間が大量に発生することだろう。

 大修復後のプレインズウォーカー4人が協力したからといって、ソリンとウギンが殺せなかったエルドラージを殺せるんですか? プレインズウォーカーの能力に何か変化があったんですか?

 この質問は複雑なので、完全な回答はストーリー・チームでなければできないだろう。私から答えられることは、ソリンもナヒリもウギンも、エルドラージを殺そうとはしなかった、ということである。

 欠色カードとそうでないカードがコレクター番号上で別々にまとめられているのは何故ですか?

 コレクター番号は、まずカード枠が優先されて、それから色ごとに分けられている。それが、多色カードがすべてひとまとめになっている理由だ。エディットがこれについて最初に指摘してきて、欠色カードの順番について数回の会議を重ねた。最終的に、カード枠をまとめ、欠色カードは各色の一番先頭にまとめることにした。欠色を最初に置いたのは、通常、無色枠(アーティファクトではない真の無色枠)を有色枠より前に置いているからだと思う。

 新ドラフト構造(新旧旧ではなく新新旧)はどのような効果がありましたか?

 最大の効果は、セットの枚数を変更したことだった。また、新しいメカニズムの数にも影響があった。最後に、開封比には大きな影響があった。小型セットのブースターが1個から2個になったので、何枚手にすることが予想されるかが変わったのだ。

 今回のストーリーでエルドラージが勝つというアイデアはどれぐらい検討されましたか?

 今回の冒険はゲートウォッチの結成が主眼だった。そして、チームを結成して最初に負けましたというのはあり得ない。一番最初に無残な敗北を喫したチームが、その後も協力しようと思うはずがない。つまり、そのアイデアはほとんど検討しなかった。

 ウラモグが最初でコジレックが二番目というのにはデザイン上の理由がありますか?

 エルドラージの巨人が登場する順番は、純粋にストーリー側の決定だ。

大理石色の連絡袋

 再び、記事の終わる時間がやってきた。いつもの通り、最新のセットについての質問に答えることを楽しませてもらったし、『イニストラードを覆う影』の発売後にはこぼれ話をやろうと思っている。今後も繰り返していく予定である。さて、いつもの通り、諸君からの反響を楽しみにしている。今回の感想や、今後のこの記事をどう向上させるためのアイデアなどを、メール、各ソーシャルメディア(TwitterTumblrGoogle+Instagram)で(英語で)聞かせてくれたまえ。

 それではまた次回、こぼれ話が終わって基本根本を話すときにお会いしよう。

 その日まで、あなたが『ゲートウォッチの誓い』を掘り下げ、このこぼれ話の内容を見出しますように。

(Tr. YONEMURA "Pao" Kaoru)

最新Making Magic記事

MAKING MAGIC

2020年 7月 25日

セット・ブースター by, Mark Rosewater

今日は、『ゼンディカーの夜明け』で初登場するもの、新型ブースターについて語っていく。それが、今回のタイトルにもなっている、セット・ブースターと呼ばれるものである。今日の記事ではそれについて話そう。 詳しい話に入る前に、少し伝えておきたいことがある。これは、我々がマジックに新しく導入するものだ。何もなくなるわけではなく、現在の製品は何ひとつ変わらないままである。これまでの...

記事を読む

MAKING MAGIC

2019年 9月 24日

プロジェクト・ブースター・ファン by, Mark Rosewater

(編訳注 7/24:一部の用語を修正いたしました。「枠なしプレインズウォーカー」→「拡張アート版プレインズウォーカー」)  私が、誰もが話題にするようなマジックについての新情報がたっぷり詰まった記事を時々書いていることにお気づきだろうか。今日の記事は、そういった記事の中の1本だ。これからさまざまな情報を話していくので、まずはこの記事で何を語るかについて説明することにしよ...

記事を読む

記事

記事

Making Magic Archive

過去の記事をお探しの場合 アーカイブのページをご覧ください。人気の著者による、数千にわたるマジックの記事が残されています。

一覧を見る