守護者、魔女、そして天使

更新日 Savor The Flavor on 2012年 3月 21日

By Doug Beyer

Senior creative designer on Magic's creative team and lover of writing and worldbuilding. Doug blogs about Magic flavor and story at http://dougbeyermtg.tumblr.com/

武器を失い、戦意を失い、死へと向かう。

 イニストラードの人々は苦しんでいる。その庇護者である大天使アヴァシンは《獄庫》に捕らわれ、アヴァシン教会に抵抗するすべはない。人類は絶滅の危機にある。吸血鬼、狼男、グール、そしてその次元に棲む他の怪物達に、獲物として人類を維持する考えなどない。彼らは食料のために楽しんでいる。もし何も変わらなければ、人類は永久に敗北し、人類なき世界というソリンの最悪の恐れは現実となるだろう。

イニストラードの君主、ソリン》 アート: Michael Komarck

 問題は、アヴァシンの行方が人間達にはほとんど知られていないという事だ。彼女はスレイベン大聖堂内に立つ、月の銀からなる聖なる秘宝《獄庫》の中にいる。だが彼女を崇敬する教会は、彼女の運命を恐ろしい秘密として守っている

 今日我々は、一人の聖戦士がどのようにして彼女自身へと課せられた義務を見いだし、プレインズウォーカーと対立する道へと進むのかを学ぼう。一つの執拗な任務が、どのようにしてそのプレインズウォーカーの魂内部の戦いを危険にさらすことになるのかを見よう。そして、アヴァシンの帰還のプレリリースが近づく中、君がどのようにしてアヴァシンの解放の役割を演じることができるか……そしてイニストラードの人間の運命を決定する助けとなるのかを見よう。

サリアの急速な台頭

 サリアはガヴォニーの最も将来有望な聖戦士の一人だった。年若い審問官、戦士、そして吸血鬼狩人として、彼女はエルゴード訓練場の学院を卒業後すぐに自身の価値を証明した。彼女は優秀な剣士であり、いくつかの血統の歳経た吸血鬼を打ち負かし、戦場での抜け目のなさから評判を得て、一ヶ月のうちに聖戦士となった。だが彼女を目立たせ、スレイベンの精鋭達の中に彼女の場所をもたらしたのは、その強情なほどに思いやりのある心だった。

スレイベンの守護者、サリア》 アート: Jana Schirmer & Johannes Voss

 聖戦士となってわずか2年目に、彼女はロサーと呼ばれる男の目に留まった。スレイベンの守護者とも呼ばれる彼は、月皇に仕える精鋭の防衛隊を導く、尊敬される戦士だった。ロサーはサリアが一人の老人を救い出すために爪の群れの吠え群れ全体へと突撃するのを目撃し、彼女の無私の勇気に感銘を受けた。その若い聖戦士は剣を振るい、戦い、ただ一人の無辜の魂のために自身の全てを危険にさらした。そしてロサーはその日すぐに、彼が率いる精鋭の防衛隊へと彼女を加えた。すぐに彼女はロサーの副官に出世し、彼を支えて高都市スレイベンを防衛する任務を課された。

 ロサーの信頼される右腕としてサリアは獄庫、大聖堂の庭園にそびえ立つ巨大な銀のオベリスクについて学んだ。彼女は、獄庫はアヴァシン教会が護る聖なる秘宝であると学んだが、行方不明の大天使アヴァシンがその中に捕らわれているという秘密は知らされなかった。

解放に伴う危険

 獄庫の役割と目的は月皇ミケウスと、彼が最も信頼を置く数人の司教だけに知らされていた。デーモン類から世界を安全なものとするため、庇護者アヴァシンは獄庫を、彼女が殺すことのできない強大で繰り返し現れるデーモン達を閉じ込めるために使用していた。だが獄庫はついにその天使の破滅の元となった。古参のデーモン、グリセルブランドが図々しくも異様なことに、スレイベン大聖堂の庭園中央に位置する獄庫そのものの上に立ってアヴァシンへと決闘を挑んだ。天使と悪魔は月皇と彼が許す最も高位の者達が見守る中戦った。彼らのすさまじい戦いは数日に及んだ。ついに、アヴァシンは残された力全てをもって、グリセルブランドを銀の牢獄へと決定的に追い込む束縛の呪文を呼び起こした。だがグリセルブランドはアヴァシンに策を仕掛け、槍を放って彼女を貫くと束縛の呪文を跳ねかえらせた。奸智に長けたデーモン・ロードと傷ついた天使は獄庫へと落ち、イニストラードを暗黒の時へと陥れた。

獄庫》 アート: Jaime Jones

 アヴァシンが姿を消し、聖なる魔法の力は衰えた。サリア自身も、アヴァシンの不在の中で世界の邪悪が台頭し、人類を襲うのを直接目撃した。

 ミケウスはアヴァシンの虜囚について何をすべきか苦悩した。獄庫の銀の外装を砕くことのできる魔法を用いれば、アヴァシンを解放できる可能性があるのだろうか? 獄庫は世界の救世主を内包しているが、同時にグリセルブランドと、アヴァシンが何年にも渡って閉じ込めてきたあらゆる類の想像もつかない怪物達をも内包している。獄庫を粉砕すればアヴァシンは解放されるだろうが、あらゆる類のデーモンをも世界へと戻してしまう。

 更に悪いことに、アヴァシンが銀の牢獄へと落ちる時、彼女の心臓は貫かれていた。時の流れのない獄庫の内部ではそのアーティファクトの魔法が彼女を停滞状態に保ち生かしているが、そうでなければ彼女は傷により死んでしまうだろう。もしミケウスが獄庫をこじ開ける方法を発見したなら、彼はグリセルブランドの反逆を完遂させ、アヴァシンは永遠に破壊されるかもしれない。

 決定が成され、巨大な銀の破片の性質は秘密とされた。ミケウスは防衛隊長、ロサーにさえ聖なるオベリスクの中に希望の天使が住まうとは知らせなかった。彼はただ、命をかけてそれを護るように伝えた。

 ロサーはサリアへと、同様にこの義務を伝えた。彼女は中に眠るものを決して知りはしなかった。彼女が知らされたのは、獄庫はあらゆる犠牲を払っても、邪悪の鉤爪から守らねばならぬもの、というだけだった。サリアはロサーと同じ宣誓をした。死の苦痛にあろうとも、獄庫を傷つけようとする者を決して許しはしないと。

 そして、死の大群がやって来た。

レイベン包囲戦

 ギサとゲラルフ、ゾンビ使いの姉弟は彼らの人生最大の偉業を浴びせた。屍術のグールと屍錬金術のスカーブからなる巨大な軍勢。姉弟間の狂気の対抗心から互いをしのぐことを願いながら、彼らは死者の軍勢で都市スレイベンを包囲し、不浄なクリーチャーの波を聖なる都市へと送り込んだ。スレイベンを防衛すべく、多くの市民や聖戦士が命を落とした。最終的に、サリアが計画を整えた。スレイベンの家々から屋根を葺く藁を集め、死者の軍勢への罠を作った。彼女はグールとスカーブの裏をかき、スレイベン大聖堂の内なる聖域へと突き進まれる前に巨大な炎の輪で彼らを灰へと帰した。

 だが彼女は敬愛する上官の命を護ることはできなかった。戦闘の間、奇妙で邪悪な声に苛まれ、ロサーはスレイベンの高い城壁の一つから死へ向かって飛び込んだ。

狂気の残骸》 アート: Todd Lockwood

 月皇ミケウスはサリアを昇進させ、彼女にスレイベンの守護者の称号を与えていた。だが月皇もまた、ギサとゲラルフの強襲によって殺害された。月皇の死はイニストラード四つの州への冷酷な知らせとなり、そして教会の持つ力という概念にとって更なる打撃となるだろう。このことからミケウスは内密に葬られ、大聖堂の地下墓地へと密かに運び去られた。

 そしてミケウスと共に、獄庫にアヴァシンが囚われているという秘密も埋葬された。

 サリアはスレイベンの精鋭防衛隊を預かり、彼女の前任者の代わりにスレイベンの守護者となった。彼女は獄庫の安全を維持する、そして、彼女にとっては知るよしもないが、獄庫内部にアヴァシンを維持するという誓いを捧げた一人の人間となった。彼女は獄庫にひびを入れることさえできるかもしれない、もし彼女がその知識と、そうしたいという意思を持ったなら。それどころか彼女は、解き放たれるであろう悪魔的クリーチャー達と向き合うのに十分な勇気を持つ者かもしれない。だが彼女は古い友ロサーと、そして月皇へと誓った。彼女は獄庫と、彼女の誓いを固く護っていた。

彼女の守護は、長くは続かなかった。

死の魔道士、赴く

 イニストラードの終章において役割を果たすであろう、もう一人の女性に目を向けよう。リリアナ・ヴェス、その探究が彼女をイニストラードへと導いた。

リリアナの愛撫》 アート: Steve Argyle

 昔、リリアナは4体の強大なデーモンと、彼女の魂と交換に永遠の若さと並はずれた死の魔術の能力を手にする契約をした。だがその暗黒の取引の利益を享受していても、リリアナは負債を公正に、明瞭に支払う人物ではない。これらのデーモンを屠れば魂の負債から解放されると信じ、彼女は多くの次元にまたがる破壊任務についている。

 彼女は既にコソフェッド、彼女の魂の所有を主張する4体のデーモンのうち最初の1体を殺害した。だがそれは彼女に安心をもたらしはしなかった。彼女は魔法を使う時にはまだその身体に輝く紋様を見る。それは彼女の皮膚に直接刻まれた契約の魔法的な証である。そして彼女が所有する鎖のヴェール、暗黒の力を持つアーティファクトは、それを使用するほどにかつてない強大な力で彼女を誘惑してくる。殺害目標一覧の次の標的を始末したなら、状況は大いに良くなるだろうと彼女は期待している。

 彼女は、デーモンのグリセルブランドがイニストラード次元のどこかにいることは知っている。そして彼女の捜索は終わりに近づいている。脅迫、説得、死の公然の脅しによって、彼女は目的地への道を確かにするための手がかりを集めている。

 ステンシア州、硫黄臭い灰口の周辺で情報を探し求める間、彼女はデビル達を殺した。そして彼女はやがて下位のデーモンへと行き着いたが、そのデーモンは彼女の脅迫の試みに嘲り、笑うだけだった。だがそのデーモンが人間に崇拝されている事を自慢した時、彼女は求めるものを得た。リリアナは追跡の新たな手がかりを得た。

 彼女はステンシアからネファリア州へと向かい、ヘイヴングルとセルホフの街でデーモン崇拝についての噂を掘り起こした。彼女の取り調べは一つの名前と場所に辿りついた。スカースダグ教団と都市スレイベン。

 だがリリアナには扱うべきまた別の問題があった。野生語りのガラク、以前遭遇した際に彼女が恐るべき鎖のヴェールで呪いをかけたプレインズウォーカー。彼女がグリセルブランドを追跡する間もガラクは彼女を追跡し続け、黒マナによる苦悩はその巨体の獣狩人をよりいっそう情け知らずにするだけだった。

 今のところ、グリセルブランドは苛立たしいほどに引っ込み思案であることを証明してきた。リリアナはスレイベンへと赴き、スカースダグ教団についてより多くを見つけねばならない、そのデーモンの所在を誰かが知っていることを期待して。その間にも、彼女の死の魔術をより強くするために鎖のヴェールを使用するという分別について疑念を抱き始めた。ヴェールの誘惑は不安になるほどに増大してきている。だが彼女はそのアーティファクトの力なしにガラクを打ち負かすことができるのか定かではなく、そしてその呪われた獣魔道士は彼女を休むことなく追跡し続けている。彼女はできる限り彼を避けねばならず、もしくは、それができないならば彼の裏をかくか……全てはイニストラードの邪悪な力の縮図、グリセルブランドと対面するという栄誉のために。

大聖堂での対立

 これら、一意専心の女性二人はまもなく出会う。サリア、スレイベンの守護を誓った女性はその中心に座する聖なる秘宝、獄庫に害をなそうとする者は決して許しはしないだろう。リリアナ、グリセルブランドを捜し出すことを決意した女性は、その野心の前に立ちふさがる次元に縛られた戦士を決して許しはしないだろう。二人が対峙し、そして衝突したなら、アヴァシンの運命が明かされるだろう。

高まる献身》 アート:y Daniel Ljunggren

 昨年から君達はアヴァシンの失踪について、イニストラードの聖なる魔術の衰えについて、そしてイニストラードの恐るべきクリーチャー達がどのように台頭し人類を獲物としているかを学んできた。君達はアヴァシンの創造における吸血鬼のプレインズウォーカー、ソリンの役割と、彼がどのようにアヴァシンへと、暗黒と応戦することによってイニストラードに均衡をもたらし、人類を護るよう託したかを学んできた。君達は月皇ミケウスと、彼がアヴァシンの獄庫への虜囚という秘密をどのように墓まで持って行ったかを学んできた。そして君達はデーモンのグリセルブランドと、獄庫への同時の虜囚、そしてプレインズウォーカー、リリアナ・ヴェスがどのように、あらゆる犠牲を払おうとも彼を探し求めているかを学んできた。 .

 4月9日、アヴァシンの帰還プレビューを開始する特別記事にて、私はこの物語の最後のピースを君達に語るつもりだ。君は獄庫での戦いがどのように繰り広げられるのか、そして待望のアヴァシンがどのようにイニストラードの歴史の新たな章の鐘を鳴らすのかを聞くだろう。だけど君達にもまた、演じるべき役割がある。

 4月28-29日、アヴァシンの帰還プレリリースの週末、まさに地元のゲームショップで君もまたイニストラードの歴史の一部となるかもしれない。特別な「獄庫」イベントにて、君と君の仲間プレイヤーは一緒に高名な獄庫をこじ開けるべく協力し、そしてその内容を解明することができる。アヴァシンの帰還プレリリースでの獄庫イベントについては、この記事に掲載されている詳細を読むのが確実だ。

「破壊し得ぬものは縛られるであろう」
――希望の天使、アヴァシン

(Translated by Mayuko Wakatsuki / TSV Yohei Mori)

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