舞台裏から:神河世界の創造

更新日 Feature on 2004年 9月 6日

By Jeremy Cranford

Translated by Yoshiya Shindo

 それは 2003 年の冬の話で、開発部のクリエイティブチームは長い議論の末、“アース”と呼ばれていたマジックの新しいエキスパンションのために新しい次元を作ることを決めました。今回、ゲームデザインとしてレジェンドをたくさん入れることが決まっていて、ぜひともアラビアン・ナイトのような世界を生み出そうという話で盛り上がっていました。実際の話、リチャードが今すぐ東洋世界に行きたくないというのはわかってはいましたが、アラビアン・ナイトの発売からはもう10年もたっているのですし、日本文化を基準とした次元を創り出すのにいいタイミングなんじゃないかと思ったのです。

 開発の初期の段階では、ブレイディ・ドマーマスと私は調査に時間を費やしました。我々は日本の市場でも受け入れられる日本をベースとしたファンタジーの舞台を創らなければなりません。それは我々がまったく見たことの無いものでなければならず、しかも100%マジックである必要があるのです。この仕事は我々にはぴったりです。そこで我々はこの仕事をやり遂げるために、コンセプト・イラストのオールスターチームを集めました。オーガのような大型クリーチャーはヒュー・ジャクソン、新しい環境はロブ・アレクサンダーに任せました。アンソニー・ウォーターズは多くのとんでもない神という名のスピリットを生み出しました。

 物事はうまく行っているようでしたが、このパズルには決定的な一ピースが足りませんでした。コンセプトアートを引っ張る日本人アーティストが必要だったのです。私はこの仕事をアメリカ人だけで流行りたくありませんでしたし、日本人のアーティストはこの新しいマジックの世界に本物の感覚をもたらしてくれるでしょう。そんなときに、私は一徳を見つけました。毎日イラストの仕事にかかる前に、彼は一時間ほど剣を振って創造力を高めるのだそうです。彼が言うに、剣は自分の精神を鉛筆に集中させてくれるんだとか。アーティストが剣を振るう様を見れば、そこから多くを見て取ることができるという話ですね。他の人は、まあ腕立て伏せで一日を始めるんですがね。

 我々は素晴らしいストーリーのあらすじを受け取っていました。また、我々の新しい世界は日本の“戦国時代”をそこはかとなくモデルにしようと思っていました。

 日本には、他の文化と同様に、幽霊や精霊のたくさんいる霊の世界があります。通常はこれは我々が日々過ごす世界は霊の世界とは混じりあうことは無いですけど、時として我々は幽霊をちらりと見ることがあります。しかし我々に必要なのは、人間の住む現実世界に“向こうの世界”の精霊たちが現れることのできる世界なのです。神道によれば、世界中のあらゆる物の中には神様がいるそうです。それじゃ、それらが我々の世界に登場し始めたとしたらどうでしょうか? 我々の夢や悪夢の神が玄関口にと姿を現したとしたらどうでしょうか? こいつは興味をそそられるクリエイティブな挑戦です。

 通常の怪物と精霊のクリーチャーをどう見分けていけばいいのでしょうか? 彼らの姿は? 私は、“向こうの世界”の精霊の姿を奇妙なものにして、それらが明らかに“普通の”世界のものとは異なるようにしたいと考えていました。もちろん、アーティストが私を失望させることはありませんでした。彼らが出したアイデアは、我々の世界に現れた精霊は少々不安定で、奇妙なエネルギーの物体を周りに飛ばしているというものでした。神が殺されたり精霊の世界に帰されたりすると、その物体も消えます。このアイデアはなかなかでした。これはビジュアルのきっかけとしては素晴らしいものだったので、我々はそこから行くことにしました。以下の初期の神のコンセプトのスケッチに、そのエネルギーの物体を見ることができます。


初期の神のコンセプト

 ヒューはこの新しい世界に素晴らしいキャラクターやクリーチャーを生み出すのに大忙しでした。以下はその初期のアイデアのいくつかです。これは“蛮族の王”と彼の猟犬、それと初期のオーガのコンセプトスケッチです。


“蛮族の王”とオーガのコンセプト

 私はロブの神河の土地のコンセプトを始めて見たときのヒューやアンソニーや一徳の顔をまだ覚えていますね。

 我々はミラディンの素晴らしい金属の世界に続く素晴らしく瑞々しい風景を神河に与えるつもりだったのですが、その仕事にロブはぴったりでした。彼は奇妙な“クレーターだらけの平原”や、魔法の滝とそこに浮かぶ島々、暗く不気味な竹林の沼地、古代のシーダー杉に覆われた森や凍りついた遥かに高い山の頂などを生み出したのです。それは実に素晴らしいものでした。以下は最初のコンセプトスケッチです。


神河の平地のコンセプト
神河の島のコンセプト

神河の沼のコンセプト

神河の山のコンセプト
神河の森のコンセプト

 その後、我々は神河に特有の新しい種族を生み出すことになりました。とある昼休み、我々のテーブルで一徳が我々に話してくれたのは、“月人”という月に住む種族にまつわる民俗伝承で、彼らが空を降りて地上へやってくるという物語でした。また彼は、小さくて悪戯好きな悪鬼や、賢くて魔法を使う狐の話を語ってくれました。私はその物語にはまり込み、その結果5種類の新しい種族が生まれました。白の狐人、青の月人空民)、黒の鼠人、赤の悪忌、緑の大蛇人です。

狐人のコンセプト
月人のコンセプト
鼠人のコンセプト

悪忌のコンセプト
大蛇人のコンセプト

 そして全員の努力の後、我々は神河のスケッチをすべて壁に張り、一歩下がってそれをみんなで眺めました。我々はやり遂げたのです! 我々は独自の、正真正銘の、それでいてマジック的ファンタジーである物を作り上げたのです。


神河物語のコンセプトイラストチーム

 我々が作り上げた世界を、同じぐらいあなたたちが楽しんでくれることを願っています!

——ジェレミー・クランフォード

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