卑血圧の女

更新日 Serious Fun on 2005年 1月 11日

By Anthony Alongi

Translated by Yoshiya Shindo

 マジックの多人数ゲームを行う上で学ぶべき最も大変なことはバランスだ。クリーチャーと除去のバランス。土地と呪文のバランス、重い呪文と手軽な呪文のバランス、その他諸々。

 しかし今週は、独自のバランスを非情にすばらしく保っているやつに注目しようと思う。待機してブロッカーとなることと、(最終的には必要に駆られて)的を葬り去る欲望とのバランスだ。

 まずはいつもどおり、ルール的なところからやっとこう。

  • 《卑血の芙巳子/Fumiko the Lowblood》が攻撃に行ったら、自分自身を数える。なんで、彼女は攻撃時は少なくとも武士道1だ。
  • 神河物語の武士道の基本的なとこを思い出そう。武士道の修整の+X/+Xはどんな状況でもかかるってわけじゃない。俺たちのほとんどはすでに武士道を使ってきてるがこの手のカードはいつだって初心者をけつまずかせる物だってのは、毎度受け取る大量の読者メールで十分わかってる。《卑血の芙巳子》と攻撃クリーチャーがどうしたって話をしたいんなら、こいつがブロックするなりされるなりしなくちゃいけない。武士道についての詳しい内容は、総合ルールを見てくれ。
  • 《卑血の芙巳子》の武士道の値は、各プレイヤーの攻撃クリーチャーに依存する。こいつの血をたぎらせるには、別におまえの軍勢で攻撃に行かなきゃいけないってわけじゃない。どこかで誰かが殴るたびに、《卑血の芙巳子》の内側で何かが起こるのさ。こいつは普通、《卑血の芙巳子》が防御に回ってなきゃ関係ないんだが、世の中にはいつだってこの手のカードとシナジーになるやつがあるもんさ。そうだろう? カジュアルで遊んでるやつらの中には、「同時進行ターン」ってやつの導入に賛成のやつもいりゃ反対のやつもいるだろう。それはお前の世界がどれだけいかれてるかによるもんだ。
  • 《卑血の芙巳子》の武士道がスタックに乗ったところで即死の《ショック/Shock》が飛んでくることだってあるだろうが、そいつは他の侍だって同じことだ。もちろん、その前にやったっていいんだがな。頼むから「攻撃に参加しているクリーチャーの数」ってやつを、現実以上に複雑にしないでくれ! もちろん、お前が面倒にしたいってんなら……。
  • 《卑血の芙巳子》が一戦交える前に攻撃クリーチャーを除去ってXを下げることも可能だし、こいつは武士道がスタックに乗ったところで対応してやったっていい――ただし、武士道が解決されちまったら、Xも確定だ。こう考えてみろ。《卑血の芙巳子》の能力が、例えばブロックするなりされるなりするたびにX点のダメージを飛ばすもんだと仮定する(Xは攻撃クリーチャーの数だ)。能力が誘発して解決されてクリーチャーが死んだとして、その後に攻撃クリーチャーが死んだら……元に戻ってXが下がるか? そんなこたない。だからこいつも同じだ。
  • 1ターンに複数回の攻撃があったら、新しい攻撃のたびに武士道は再計算される。詳しくは後で。
  • 壁とか防衛持ちは攻撃できないことに注意。まあ、こいつはカードに書いてあるわな。ちょっと遊んでみただけだ。

 このカードのルールに関する面倒な話は、土曜学校のマネージャーのジョン・カーターのところに送ってくれ。まあとにかく、俺もこのセットを覚えてる最中だしな!

血は低く、賭け金は高く

 《卑血の芙巳子》をデザイン上の観点から見たときの最も感動的なところは、二つの能力が戦いのテンションをかきたててる所だ。

 もしこいつがただので3/2で攻撃クリーチャーの数と同じ武士道ってだけなら、お前だってこいつを何体かの仲間と一緒に毎度殴りに行かせるだろう。だが、お前がリスの軍団になだれ込まれてるってんなら、彼女はすばらしいブロック・クリーチャーだ――もっとも、なだれ込んでくるのがリス程度なら、まあ《灰色熊/Grizzly Bears》だっていい仕事をするだろう。《卑血の芙巳子》は赤だし、能力も悪くないんだから、ブロックするのは怖いだろう……となれば、彼女は殴りにいくことになる。

 だが、こいつに“嘲る”能力が足されると、お前だって《卑血の芙巳子》をいつどうやって使うかを考え直さなくちゃいけない。みんなが毎ターン攻撃に行き、対戦相手も2人以上いるってんなら、ブロッカーを残すかどうかを考える必要がある。そして、ブロックの構えを見せるクリーチャーは大抵攻撃には行かない。

そうだろう?

卑血、貴血、熱血、冷血

Tahngarth, Talruum Hero
 《卑血の芙巳子》と普通に合うクリーチャーは警戒持ちだ――安全に殴りにいけるんだからな。総元締めは《セラの天使/Serra Angel》だが、他にも警戒持ちがこんだけいる。そのほとんどは天使とかその類だが、クリーチャー・タイプに特にこだわらないんなら、《急降下するグリフィン/Diving Griffin》なんて珍しいカードもある。

 だが、今回俺が選んだ《卑血の芙巳子》の仲間は全然飛ばない。《タールルームの勇士ターンガース/Tahngarth, Talruum Hero》は《卑血の芙巳子》の色と合っていて、しかも小型のクリーチャーをほとんど面倒なしに取り除く能力があることで、ブロックの選択肢を狭めてやることができる。

 クリーチャー選択にもっと融通を利かせたいってんなら、お前の攻撃クリーチャーに警戒を与えるもっといい方法は《天使のトランペット/Angel's Trumpet》だ。こうすれば、お前は《卑血の芙巳子》と一緒にあらゆるもので殴りかかることができる――まあ、《双子エンジン/Gemini Engine》あたりなんだろうが、《大蛇の孵卵器/Orochi Hatchery》からの100体の蛇トークンだっていいだろう。

卑血の栄光

 警戒が無い状態でも、《卑血の芙巳子》は多人数ゲームでは優秀な防御クリーチャーだ。その理由は少なくとも二つある。

  • 多人数ゲームでは、3体なり4体なり以上のクリーチャーで複数回の攻撃を行うは非常に難しい。プレイヤーのうち誰かが耐え切れなくなって、ピンポイント除去なり大量除去なりを飛ばしちまうこともある。ほとんどのプレイヤーは、防御的な目的である程度のクリーチャーを残しておく。
  • それと関係ある話なんだが、攻撃的な場合の《卑血の芙巳子》は攻撃クリーチャーが増えれば増えるほど強くなる。攻撃クリーチャーを増やすためには場に大量のクリーチャーを出す必要があり、大量のクリーチャーは場の緊張を必要以上に高め……そして、多人数ゲームにおける緊張の高まりすぎは、一対一における同じ状況よりもずっと危険だ。

 なんで、警戒を使うやり方はやめにして(俺はそっちの方が好きだがな)、代わりに《卑血の芙巳子》を防御に回すことにしよう。どうすればいいか?

 そうだな、こっちでも白と組み合わせるとこから始めるってのはどうだ? 《絡め武具/Entangler》はいい感じのエンチャントで、これを《卑血の芙巳子》に使って1/1軍団を押さえつけるのもいいだろう。白の力として《生真面目な君、昌子/Masako the Humorless》を入れるのも歩く無い。こうすれば、基本的にクリーチャーで攻撃と防御の両方が行えるようになる。

 だが、俺が《卑血の芙巳子》と白を組み合わせる理由は、そこには彼女にとってマジック最強の友人がいるからだ。

Glory
 《栄光/Glory》を《卑血の芙巳子》と組み合わせて使う方法は、少なくとも三通りある。第一に、《栄光》が防御に回るなら、《卑血の芙巳子》は自由に攻撃にいける。第二に、《卑血の芙巳子》はなんだかんだで注目の的となるクリーチャー――望まない注目も、だ。彼女から恩恵を受けるはずのプレイヤーですら、「場が面倒くさくなってきたぞ」とか思うだろう。《栄光》が墓地にあれば、《卑血の芙巳子》は防御でより強くなるし、《恐怖/Terror》だの《地震/Earthquake》だの《剣を鍬に/Swords to Plowshares》あたりでつまらない事態になることを気にしなくてよくなる。

 最後に、《栄光》はちょっとばかりすばらしいことをしてくれる。こいつがいればお前の防御は鉄壁になるから、《卑血の芙巳子》は全員にどこかを攻めるよう命ずることになるわけだ。

 そんなわけで、《栄光》は最強なんだが(まあ、全員をびびらすためにはちょっと墓地に送る努力をしなくちゃいけないが)、最後の効果に近いものでよければ、他にもカードはある――《独房監禁/Solitary Confinement》とか《スパイクの織り手/Spike Weaver》とか、《西風の魔道士アレクシー/Alexi, Zephyr Mage》ですら使えるだろう。「攻撃しろ!」の後に「俺意外をな」ってメッセージが着いてるのはいいもんだ。

低く進めば

 《卑血の芙巳子》の防御性能はこんな具合だ。だが、やっぱり彼女は攻撃に回そう。彼女をブロックしたいなんて思う相手はどのぐらいいる?

 もちろん、無理やり《寄せ餌/Lure》で解決することもできる。だが、それは《卑血の芙巳子》が対処しきれる以上のものを引っ張り込む可能性がある。いずれにせよ、一つの目的をやりすぎるカードは好きじゃないし、代わりに望む結論のためにもっとしっかりした戦略がデッキに入れられるんならそっちの方がいい。

 《卑血の芙巳子》は赤だ。赤は攻撃時に突如パワーが上がることで恐れられている。何を言いたいかわかるか? 《ギトゥのときの声/Ghitu War Cry》とか、もっと単純に《骨断ちの矛槍/Bonesplitter》でもいい。攻撃のダメージが3点で足りないならその倍を通すことを考えればいいし、まあ5点でも7点でも10点でもいいだろう。

 この美しさは、おそらくこの手のカードはお前のデッキにすでに入ってるだろうってことにある。違うか? (「もちろん!」) それに、いいか! お前はどこぞの妙ちきりんなおべっか使いのコラム書きに、お前のデッキを作って欲しいのか、どうなんだ! (「やなこった!」) 俺の意見を聞きたいんならな、おい、それが何だか教えろや! そら! (「おお! ガツンと行け、アロンジ!」) それじゃ俺のデッキリストを……おっと、今回はデッキリストが要りようになるとは思ってなかったぜ。

 攻撃的なデッキの中には、防御側がブロックする必要があるものがすでに入ってるもんだ。それ以上やりすぎることはない――相手にやらせてやりゃいいんだ!

血は低く、ダメージは痛く

Godo, Bandit Warlord
 もちろん、プレイヤーの中には《卑血の芙巳子》の武士道能力を悪いことに使う方法を探そうってやつもいるだろう。コンボデッキのリストは出さないよ。だが、話の取っ掛かりぐらいは教えてやってもいいだろう。

 ちらっと上のルールの項目で書いたが、《卑血の芙巳子》を1ターンに複数回攻撃に行かせれば、そこに可能性が出てくるだろう(《山賊の頭、伍堂/Godo, Bandit Warlord》を出すとかな)。そうなった場合、こんな事態が起こるだろう。

  1. 《卑血の芙巳子》が最初にブロックされたとき(他に5体の攻撃クリーチャーがいるとして)、次の戦闘の開始時はこいつは8/7の武士道X持ちだ。
  2. 《卑血の芙巳子》が二度目にブロックされたら(攻撃クリーチャーが4体しか残ってないとして)、X=4になるからこいつは12/11になる。
  3. そこで《凶暴な打撃/Savage Beating》を双呪で撃つと、こいつは12/11の二段攻撃の武士道Xで、X=、おっと、5ってことにしとくか?
  4. ここで《侍の御大将、武野/Takeno, Samurai General》が出てるとすると、今やこいつは17/16の二段攻撃持ちで武士道5ってことになる。
  5. 《投げ飛ばし/Fling》には「投げ飛ばしをプレイするための追加コストとして、クリーチャーを1体生け贄に捧げる。クリーチャー1体かプレイヤー1人を対象とする。投げ飛ばしはそれに生け贄に捧げたクリーチャーのパワーに等しい点数のダメージを与える。」と書いてある。

 まあとにかく、何か思いつくだろうな。

 アンソニーはデッキ構築の助けを行えない。彼は「武士道X、Xは許可したときに流れ込んでくるリクエストの数」の能力を持っていないからだ。

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