決勝:圧倒する続唱
渡辺 雄也(日本) vs. 八十岡 翔太(日本)

更新日 Event Coverage on 2012年 8月 31日

By Nate Price

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渡辺 雄也(ジャンド) vs. 八十岡 翔太(青赤緑コントロール)

 ここに至る道は長く、危険に満ちたものだった。渡辺雄也と八十岡翔太は、次々と呪文を投げつけてくる最高のマジック・プレイヤー14人が跋扈する戦場を通る道を、紆余曲折ありながらも進んできた。3つのフォーマットに及ぶ13ラウンドを通して、2人のプレイヤーは戦い、この場所に手をかけた。八十岡の道は渡辺の道に劣らず困難なものだったが、その道はずっと多くの成功に満ちていた。この週末で落としたマッチは1つだけ。2000年の全米オープンを15ストローク差で圧勝したタイガー・ウッズを彷彿とさせる形で、八十岡はこの大会を支配していた。八十岡はスイス・ラウンドを渡辺雄也と12ポイントもの大差をつける33マッチ・ポイントで終えた。その後も、準決勝で3ゲームを素早く取り、ジョン・フィンケル/Jon Finkelを撃破した。

 一方、渡辺がここに至るまでの道のりは険しかった。中間くらいの順位で苦しんだ後、多くのプレイヤーが6−5の成績で並ぶ中、彼はスイス最終ラウンドを勝たなくてはならず、加えて最もプロ・ポイントを稼ぎ出したという事実を武器にTop4の座を射止めなくてはならなかった。さらに、準決勝ではパウロ・ヴィター・ダモ・ダ・ロサ/Paulo Vitor Damo da RosaのZooデッキとの厳しい戦いを強いられ、これを3−1で下した。舞台は整い、渡辺はトロフィーを得るため、険しい道を行く。八十岡の方は、勝ち目の薄いマッチアップにも関わらず、是が非でも決勝でダモ・ダ・ロサと相見えることを望んでいた。なぜなら、彼はデッキの相性よりも、その使い手と戦い、倒すことを望んでいたからだ。「渡辺と俺はどちらも日本人だから、事あるごとに戦っている。たとえ相性の悪い相手でも、ChannelFireballの誰かと戦う機会が欲しいんだ」

2人のジャパニーズ・ジャガーノートが、伝説的なマジック・プレイヤー選手権決勝戦を始めた。

ゲーム1

 八十岡がこの伝説の決勝第1ゲームの先手を取ったが、最初に仕掛けたのは渡辺だった。彼の《コジレックの審問》は八十岡の《タルモゴイフ》を《瞬唱の魔道士》、《謎めいた命令》、そして3枚の土地の中から取り払い、加えて続く数ターンにわたる完全な情報を渡辺に与えた。彼にとって不運だったのは、最も仕留めたいカードのひとつが、偶然にも八十岡のデッキの一番上に潜んでいたことだった。八十岡はドロー後すぐさま《霊気の薬瓶》を唱え、渡辺を小さくうなずかせた。渡辺は2枚目の《コジレックの審問》を得て、《瞬唱の魔道士》を取り去った。

 次のターンも、渡辺は八十岡の手札を破壊し続けた。《思考囲い》で《謎めいた命令》を剥ぎ取ると、八十岡の手札は《呪文嵌め》だけとなった。さらに渡辺は、ゲームが長引く前に攻撃を始められる《樹上の村》をうまく設置できた。しかし、まずは厄介な《霊気の薬瓶》に対処しなければならなかった。渡辺は《大渦の脈動》で破壊しようと試みたが、八十岡がこれ以上ないドローを成しており、今引きの《マナ漏出》を使って《大渦の脈動》を阻んだ。

 他にすることもないので、渡辺は《樹上の村》を攻撃に送り始めた。八十岡は薬瓶のカウンターを3つにして、《永遠の証人》を出した。回収した《タルモゴイフ》が、渡辺にこれ以上《樹上の村》による有効な攻撃をさせず、同時に、八十岡に強力な脅威をもたらした。渡辺も《タルモゴイフ》を投入しようとするが、八十岡にはこれが止めどころだとわかっており、《呪文嵌め》を使った。幸運にも渡辺は2枚目を持っていて、わずかに有利を取り戻した。

渡辺雄也と八十岡翔太は、いくつもパンチを交換した。大量の《稲妻》と《タルモゴイフ》と共に。

 八十岡の手札は1枚で、渡辺は《タルモゴイフ》を攻撃に送り出すことに決めた。八十岡は《永遠の証人》と《タルモゴイフ》でダブル・ブロックに入るが、渡辺は《稲妻》2枚で、ダメージ解決前に《永遠の証人》を焼き、解決後に《タルモゴイフ》を除去して、八十岡の盤面を片付けた。惜しむらくは八十岡もまた完璧なカードを持っていたことで、彼の《稲妻》が渡辺の《タルモゴイフ》を除去した。主な脅威がいなくなったため、渡辺は《樹上の村》を送り出す方に戻った。2度目の攻撃の際、八十岡が《瞬唱の魔道士》で《稲妻》をフラッシュバックし、渡辺が持つ唯一の脅威を退場させ、今度はその過程で八十岡が脅威を得た。渡辺は解答を得るのに2ターンかかったものの、彼が引き込んだ《稲妻》は、試合を均衡状態に戻した。

 間もなくして渡辺がその均衡を破り、《台所の嫌がらせ屋》で巨大なアドバンテージを得た。貴重なライフに加えて、《台所の嫌がらせ屋》は非常に粘り強いアタッカーを渡辺にもたらした。その脅威が自身のライフに向かうのを先延ばしにするため、八十岡は渡辺がさらにライフを得ることを知りつつ、《蒸気の絡みつき》でもう1ターン《台所の嫌がらせ屋》を寄せ付けないようにした。渡辺が威勢良く次のターンに入ったとき、八十岡は《霊気の薬瓶》から《ヴェンディリオン三人衆》を出し、渡辺が持つ《大渦の脈動》をそのまま残した。三人衆が《台所の嫌がらせ屋》をブロックし、八十岡は続くターンに《稲妻》でそれを片付けるチャンスを得た。

渡辺は対戦相手をじっと見つめる。両者とも、第1ゲームを有利に進める道を登るために脅威が必要だった。

 この時点では、どちらのプレイヤーの盤面にもクリーチャーはいなかった。ライフは14−6で渡辺が上回り、八十岡が何か危険なものを探し当てたら撃つべく、《大渦の脈動》も握っていた。渡辺は《コジレックの審問》を八十岡に差し向け、《稲妻》を抜いて《呪文嵌め》を残した。渡辺が《血編み髪のエルフ》から《ヴェールのリリアナ》を続唱したので、《稲妻》抜きは大正解だった。それから八十岡のライフを3まで落とし、彼の手札を捨てさせ、選択肢を狭めた。八十岡は《ヴェンディリオン三人衆》を引いたものの、それは次のターンに攻撃する《血編み髪のエルフ》のブロックに回した。渡辺は《霊気の薬瓶》の悪事がいやになったのかそれを叩き割り、《血編み髪のエルフ》がいた場所に《闇の腹心》を置いた。

 次のターン、渡辺が《血編み髪のエルフ》を引くと《闇の腹心》がその配当を支払い、八十岡から最初のゲームを奪うための最後のひと押しへと分配した。

渡辺 1-0 八十岡

ゲーム2

 渡辺は手札を広げ、眼前の土地が1枚であることを確認した。それを取り巻くのは《闇の腹心》を含めた豊富な2マナ域の呪文だ。ドローに強大な可能性を持つ手札でありながらも、渡辺は安全な道を選び、それらを戻した。

 第1ゲーム同様、渡辺は序盤に《樹上の村》を置けたものの、手札が1枚少ない状態から始めてドローにも土地が少ない状態が続き、たとえ好機を得ても、彼はすぐさまカードを活用できないように思われた。《闇の腹心》でマリガン分のドローを狙うチャンスが来たが、八十岡は《稲妻》を持っていた。また、渡辺が握っているものについての情報を得られる《ヴェンディリオン三人衆》もあった。八十岡は最終的に《ジャンドの魔除け》を、2枚目の《闇の腹心》、《台所の嫌がらせ屋》、《原基の印章》と土地1枚の中から流すことにした。

 渡辺は魔除けの代わりに5枚目の土地を引き、《樹上の村》が近いうちに行動を起こすだろうと感じられた。彼は自陣に《台所の嫌がらせ屋》を追加し、《ヴェンディリオン三人衆》とのライフ・レースを良い方向に持っていった。しかし、八十岡は《台所の嫌がらせ屋》への確実な解答である《高原の狩りの達人》を持っていて、ライフを回復し1体分のコストで2体のブロッカーを得た。アドバンテージは大きく八十岡側に傾いていながらも、渡辺は《血編み髪のエルフ》で2枚目の《台所の嫌がらせ屋》を続唱し、持ちこたえていた。

 続くターン、八十岡は呪文を唱えず《高原の狩りの達人》を《高原の荒廃者》へと変身させることを決め、渡辺の《台所の嫌がらせ屋》1体を撃ち抜くと、事は簡単ではなくなった。渡辺は《ヴェールのリリアナ》で優位を得ようとするが、八十岡はこれを《謎めいた命令》のカウンター+ドローで阻んだ。八十岡は空から攻撃を続け、《高原の荒廃者》が地上を固めている間に《ヴェンディリオン三人衆》で渡辺のライフを12まで減らした。

八十岡はゲームから目を逸らさない。その努力の先にあるかもしれない賞は、彼の近くに鎮座している。

 渡辺は窮地に立たされていた。ライフ・レースでは遅れをとり、手札は困難を切り抜けるものではなかった。彼の手札は《闇の腹心》と、使うところのない《原基の印章》、そして《思考囲い》だ。この場面ではそれらが価値のあるものとは言い難く、それどころか、この状況の手助けとなるより傷口を広げるものだった。渡辺は意を決して《思考囲い》を唱え、八十岡の手札から《呪文嵌め》を取り払ったものの、これによってライフは9まで落ち込んだ。返しのターン、八十岡が《永遠の証人》を引き込み、それをプレイして《謎めいた命令》を回収してもなお、渡辺は全てのクリーチャーがタップされようとするまで降参をしなかった。

渡辺 1-1 八十岡

ゲーム3

 第3ゲーム、八十岡は威圧感を放つ初手《霊気の薬瓶》を着地させた。これが渡辺にドロー後の動きを止めさせ、頭を抱えさせる原因となった。性急に行動を起こすよりも、ターンを渡し、待つことを渡辺は選ぶ。彼はその後のターンで《台所の嫌がらせ屋》を盤面に追加したが、薬瓶の上にはカウンターが2つあり、ここからしばらく盤面にクリーチャーが1体だけ、ということは見込めそうになかった。

 八十岡は《稲妻》を使って、ダメージを受けないターンをもうひとつ獲得し、後のターンに薬瓶から出す《タルモゴイフ》を1/2にする、という二重の目的も果たした。《霧深い雨林》を置いて《タルモゴイフ》を2/3まで大きくできるようにし、いつでも《台所の嫌がらせ屋》をブロックできる状態にした。

 渡辺は難しい決断と向き合っていた。他にやるべきことがなくとも、場に2枚ある《怒り狂う山峡》の攻撃開始を控えさせていたが、不運なことに、渡辺が土地を全て攻撃に回したその直後、八十岡は《瞬唱の魔道士》で《稲妻》を使用可能な状態に戻し、《怒り狂う山峡》を除去した。それから八十岡は《霊気の薬瓶》のカウンターを4つにして、全くありがたくないことを始めた。2ターンにわたって、《エレンドラ谷の大魔導師》、《高原の狩りの達人》と繰り出したのだ。

 渡辺は、《高原の狩りの達人》を直ちに除去できる《オリヴィア・ヴォルダーレン》を最後の頼みの綱としていた。八十岡がもう一度《高原の狩りの達人》を出すと、渡辺もオリヴィアでこれに対処した。同時に渡辺はこの吸血鬼の女王に《瞬唱の魔道士》の処理も依頼し、徐々に八十岡の盤面で好き放題やるようになり、《稲妻》の圏内からも遠く離れた。手がつけられない状態になった彼女を止めるためには、八十岡が《謎めいた命令》を引き込まなくてはならない。

破壊するのに多大な困難を伴う《オリヴィア・ヴォルダーレン》の後ろで悠然と座り、渡辺は決勝戦第3ゲームの勝算に確信を感じていた。

 サイズを上げていく脅威はさておき、八十岡側にもまだそこそこの数のクリーチャーとなかなかのライフ総量があった。惜しむらくは、渡辺のライフ総量もまたかなり高く、両プレイヤーとも23で並んでいたことだ。この長い道のりは、渡辺とサイズを上げていくオリヴィアの味方をしたに違いない。八十岡はなんとか《高原の狩りの達人》を投入し続けたが、渡辺は戦い方を変えず、そのターンのうちにオリヴィアで除去し続けた。マナの全てをオリヴィアのマシンガンに拘束され、何か新しくプレイすることはできなかった。結果的に、《台所の嫌がらせ屋》を得ながらの《血編み髪のエルフ》がその状況を破った。今や地上を固めるのに十分なクリーチャーがあるので、渡辺は9/9の《オリヴィア・ヴォルダーレン》で攻撃を始めた。このサイズでの攻撃行動を終えるのに時間はかからなかった。八十岡はこの一撃を緩和するため《エレンドラ谷の大魔導師》でチャンプブロックすることを選んだ。しかし、それで1/1になった大魔導師は次のターン、渡辺がオリヴィアを使って退場させることになるのだろう。

 八十岡は《血清の幻視》で解答を掘り起こし始めた。カードを引いた後、八十岡は全軍を送り込んだ。渡辺は《高原の狩りの達人》と《タルモゴイフ》、それと3体のうち1体の狼トークンをブロックした。この攻撃で渡辺のライフは23になり、2/1の《台所の嫌がらせ屋》とオリヴィアだけになるまで彼の軍団を消耗させた。八十岡が《永遠の証人》をプレイして《高原の狩りの達人》を回収すると、彼は消耗した渡辺を殴り切るつもりなのだと明らかになった。渡辺はターンの終わりに、《エレンドラ谷の大魔導師》とダメージの残っている《タルモゴイフ》をオリヴィアで処理し、八十岡の軍団を2体の狼と《永遠の証人》だけにした。カードを引き、渡辺はオリヴィアを自陣に残さないことを選び、11点での攻撃に送り出した。この時点で、渡辺は八十岡からゲームを取るまであと1ターンとなった。

渡辺のオリヴィアは最後まで役目を果たした。

 渡辺のターンの終わりに、八十岡は《霊気の薬瓶》から《高原の狩りの達人》を着地させ、それをオリヴィアが即座に餌食とした。八十岡は全軍を送り込んで渡辺のライフを18まで落としたが、それだけでは無意味に等しかった。渡辺に必要なことはアンタップして土地をクリーチャー化し、彼の軍団を送り込んでわずか2ターンで八十岡のライフを29から0へと減らし、彼を打ち倒すだけだった。13/13の《オリヴィア・ヴォルダーレン》を持っているとしても、普通はここまでの偉業を成し遂げはしないだろう。

渡辺 2-1 八十岡

ゲーム4

 先ほどのゲームで両者の立場が逆転したのは、予想だにしない驚くべきことだった。いつも1体か2体のクリーチャーでゲームをかすめ取っていくプレイヤーである八十岡だが、過剰とも言える《高原の狩りの達人》と共に、膨大な規模の軍団の統制を取っていた。それに対して、《血編み髪のエルフ》のおかげで最小限の投資で大きな軍団を生み出している渡辺は、ゲームの大部分をクリーチャー1体で戦っていた。結果的には、1体のクリーチャーの純粋な力に多数の土地が加わり、そのゲームは渡辺が取った。

 第4ゲームでは、渡辺は思わしくない手札に再びマリガンを強いられた。前回マリガンせざるを得なかったときは、彼はそのゲームを落としていた。2番目の手札は土地1枚と《ジャンドの魔除け》、あとは4マナ域のクリーチャーが4枚で、これもまたデッキに戻すものだった。5枚になった手札は申し分なく、両プレイヤーはこれで最後になるかもしれないゲームを始めた。

 最初に仕掛けたのは渡辺だが、彼の《コジレックの審問》は《マナ漏出》に阻まれた。八十岡が《永遠の証人》をプレイして《沸騰する小湖》を回収するのにタップ・アウトすると、渡辺は《闇の腹心》を着地させる好機を得た。《闇の腹心》はアップキープを迎える前に《稲妻》の餌食となり、彼に報いることはなかった。八十岡は《永遠の証人》で攻撃を始め、少し遅たが《霊気の薬瓶》を、《タルモゴイフ》と共に投下した。

 渡辺は《タルモゴイフ》を《大渦の脈動》で、《永遠の証人》を《終止》で、とクリーチャー除去の姿勢を維持した。彼が盤面に乗り出そう、というときに、《タルモゴイフ》は《謎めいた命令》で止められた。仕事ができるほどに盤面に残った最初のクリーチャーは、八十岡が出した《エレンドラ谷の大魔導師》だった。渡辺が《樹上の村》での攻撃を試みると、八十岡は2体目の《タルモゴイフ》を《霊気の薬瓶》から着地させ、ブロックに回した。この一撃は、枯渇した状態の渡辺にとって、対処するには少しばかり大きすぎるものだった。その後2ターンにわたって、渡辺は暴れまわる《タルモゴイフ》への解答を得られず、とどめの一発が入るまでライフが落ち込んでいくのを見ることになった。

この男が最終ラウンドまで戦い抜く。

渡辺 2-2 八十岡

ゲーム5

 この試合がこうなるのは必然だった。最上級のプレイヤーにスポットを当てた大会、綺羅星のごとく輝くプレイヤーたち相手になんとか少しでも有利を得ようと徹底的に磨き上げられたふたつのデッキ。この試合には、2つ目の準決勝の試合が勝負を決したときからすでに、ゲーム5の文字が刻まれていたのだ。

 今大会において、八十岡翔太から繰り出される初手《霊気の薬瓶》よりも恐ろしい光景はなかった。そして渡辺雄也は、最後のゲームでそれを目の当たりにすることとなった。さらに彼の《闇の腹心》が《稲妻》に打たれると、事態は渡辺にとって少しばかり悪い方向へいった。しかし、彼がそのまま試合の間ひとつのことに固執しているとは、私は思わない。続くターン、渡辺は《タルモゴイフ》を《呪文嵌め》の予想込みで繰り出すことを決めた。すると八十岡はそれを通した。彼は淡々とデッキから土地を持ってきて、アンタップし、薬瓶のカウンターをふたつにした。

 渡辺は攻撃に際して一考に値する決断と向き合っていた。仮に攻撃をして、八十岡が《タルモゴイフ》と《稲妻》を持っているなら、手に負えないことになるだろう。彼は《コジレックの審問》で様子を見ることにして、そこで八十岡は《ヴェンディリオン三人衆》で対応し、渡辺の手札から《台所の嫌がらせ屋》を流した。《コジレックの審問》は解決され、《呪文嵌め》と《知識の渇望》のある手札から《永遠の証人》を取り払った。渡辺の《タルモゴイフ》が攻撃を始め、八十岡のライフを13に減らした。

 初手を《霊気の薬瓶》で始めたのとは裏腹に、八十岡のドローは渡辺と比べて特別強いようには見えなかった。八十岡は《ヴェンディリオン三人衆》をプレイし、さらに《エレンドラ谷の大魔導師》を加えたが、それにはタップ・アウトをしなければならなかった。次のターン、渡辺が《血編み髪のエルフ》を繰り出すと《ヴェールのリリアナ》を連れてきたが、これは確実に飛行クリーチャーに殺されるのは確かだ。渡辺は《タルモゴイフ》とエルフで攻撃し、八十岡は頑強で場に戻る《エレンドラ谷の大魔導師》でエルフと交換を取った。戦闘後、渡辺はリリアナを使い、八十岡にクリーチャーを生け贄に捧げさせた。八十岡は《ヴェンディリオン三人衆》を選択し、攻撃的にいくよりもコントロールの方針で進めていくことにした。

すべてが決まる最終ゲーム、渡辺が有利な位置にいた。

 渡辺は《樹上の村》を起動し、《タルモゴイフ》と共に攻撃に出た。八十岡は《稲妻》を探すべく《知識の渇望》で対応し、《稲妻》を引き込むと《樹上の村》の除去に使ったが、それでも彼のライフは4まで落ち込んだ。戦闘後、渡辺はいよいよ彼のターンになっても盤面に残る《闇の腹心》を得ようとした。八十岡は《血清の幻視》でデッキを掘り進めるが、見たカードは気に入らない様子だった。彼は《霊気の薬瓶》のカウンターを3つにして、《永遠の証人》か《ヴェンディリオン三人衆》を匂わせていた。先ほどの三人衆をあっさりとリリアナに捧げたことを考えると、実に順当な選択だ。彼は《エレンドラ谷の大魔導師》の攻撃でプレインズウォーカーを落とし、それから《蒸気孔》をアンタップ状態で置いた。彼のライフの少なさを見ると不自然な決断だ。

 八十岡が何をもくろんでいたとしても、渡辺が《血編み髪のエルフ》を繰り出し、《大渦の脈動》を続唱し、勝利への道を開けた瞬間、それは問題ではなくなった。

誰も止められないように思われた八十岡翔太を渡辺雄也が下し、マジック・プレイヤー選手権王者と、2011-2012年度プレイヤー・オブ・ザ・イヤーの称号を獲得した。

 試合後、私は両プレイヤーにこの試合の決定的瞬間はどこだと思っているかを尋ねた。

「第1ゲームと第5ゲームは、どちらが先に最初の脅威を引けるかを決めるトップデッキ勝負だった。それはナベの勝ちだったね」 八十岡はそう認めた。

「2つ浮かびましたね。ゲーム3でヤソが《エレンドラ谷の大魔導師》をプレイして、僕が《オリヴィア・ヴォルダーレン》を出せたところと、第5ゲームで僕がなんとか《血編み髪のエルフ》をプレイして勝ちにつながる続唱ができたところです」と、渡辺は選んだ。

 渡辺はこの最高の3本先取を勝ち抜いたにも関わらず、ずっとこの試合は勝ち目が薄いと考えていた。

「ずっと相性は悪いと思っていたんですよ。もしヤソがもう1試合やろうと言ってきたら、勝てる気がしません」

渡辺雄也、2011-2012年度プレイヤー・オブ・ザ・イヤー並びに2012マジック・プレイヤー選手権優勝おめでとう!

(Tr. Tetsuya Yabuki)


渡辺 雄也

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八十岡 翔太

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