憎まれ者の短牙

更新日 Feature on 2004年 9月 8日

By Mike Flores

Michael Flores is the author of Deckade and The Official Miser's Guide; the designer of numerous State, Regional, Grand Prix, National, and Pro Tour–winning decks; and the onetime editor-in-chief of The Magic Dojo. He'd claim allegiance to Dimir (if such a Guild existed)… but instead will just shrug "Simic."

Translated by Yoshiya Shindo

 私がこのカードを好きな理由はたくさんあります。

 好きな理由の一つ目は、このカードが機能的に私が気に入っているとあるカードと同じものを与えてくれることです。

Cabal Interrogator

陰謀団の取調官
クリーチャー — ゾンビ・ウィザード
, :プレイヤー1人を対象とする。そのプレイヤーは自分の手札にあるカードをX枚選んで公開し、あなたはその中の1枚を選ぶ。そのプレイヤーはそのカードを捨てる。この能力は、あなたがソーサリーをプレイできるときのみプレイできる。

 《陰謀団の取調官/Cabal Interrogator》はコントロールデッキ相手には素晴らしいカードで、特に個別除去が少しとかまったく無い青白や緑白にはよく効きます。この手の青白や緑白のコントロールデッキは今日の最も成功しているデッキの一つです。そして《陰謀団の取調官》はそれらに対して素晴らしい役割を果たします。青白や緑白は神河物語がオンスロートブロックと入れ替わるときに、真剣に入れ替えの聞かない中核たるカード、《アクローマの復讐/Akroma's Vengeance》を失います。これは《鼠の短牙/Nezumi Shortfang》にとっては朗報です。

 《鼠の短牙》のようなカードが白の除去をベースとしたコントロールデッキに対してそこまで有効な理由は、そのコストにあります。先攻の場合、あなたは《鼠の短牙》を2ターン目に出すことができて、青白デッキも緑白デッキも、それに対応してできることは顔をしかめるぐらいです。後攻の場合、青白プレイヤーは《卑下/Condescend》なり《マナ漏出/Mana Leak》なりが唯一の回答となりますが、それも2枚の土地が立っている場合(メインに《血清の幻視/Serum Visions》なりを撃たなかったんでしょうね)で、少なくとも1枚は青マナでなければいけません。どちらのデッキに対しても、このネズミ・ならず者が場に出たら、相手はこの使い勝手のいいクリーチャーに対して少なくとも2ターンは無力でしょう。

 

白のプレイヤーの選択肢その一は、大抵そのまま4ターン目の《神の怒り/Wrath of God》へと行くことになるでしょうが、そのためには4ターン目まで完璧に土地を置いた上で《神の怒り》を引いてこなくてはいけません。《神の怒り》が無い場合は、あなたは彼に数ターンは捨て札を強いることができるでしょうし、その間相手は基本的に何もできません。《陰謀団の取調官》にはさらに追加ボーナスとして、対戦相手の手札をターンに渡って《強迫/Duress》式にボロボロにできることがあります。多くの場合、これはすなわち相手が《神の怒り/Wrath of God》を持っていても、4ターン目以前に追加のマナを少々支払ってそれを捨てさせ、基本的にゲームを《陰謀団の取調官》1体だけで勝つことができるようにします。

 《鼠の短牙》には4ターン目までに同様の捨て札をさせるような能力はありませんが、2ターン目にこれを出すことができるなら、あなたは白ベースのデッキの勝利のための能力に多大なダメージを毎回与えることができるでしょう。相手の手札で大事にされているカードにこの早い段階からプレッシャーをかけることは、相手が本来望まないはずのプレイを強制させ、適切な防御や状況の組み立て無しに相手の脅威を送らせ、相手のパーミッション式の計画を完全に無効にします。《鼠の短牙》が全力を出せば、相手の手札を破壊するだけでなく、相手が何かを“隠そう”とすることにより、相手の土地の流れにも混乱をもたらすことができるのです。このような効果は、より重いクリーチャーには、サイズの大小に関わらず存在しないものです。

 私が《鼠の短牙》を気に入っているもう一つの理由は、そのネズミっぽさにあります。彼はとにかく齧歯類的じゃないですか。私が最初にこのカードを見たとき、私はこれが

Ravenous Rats

のバリエーションじゃなくて、

Cabal Interrogator

のだと思ったものです。

 私の心には《貪欲なるネズミ/Ravenous Rats》の懐かしい思い出があります。1999年、私が最初のマジックの全米選手権に出たとき、私は自分の黒単のビートダウンデッキからありきたりの《強迫》を抜いて代わりに《貪欲なるネズミ》を入れたのです。《貪欲なるネズミ》はぱっと見は《鼠の短牙》と同様の強力な妨害カードです。それは《鼠の短牙》と同様にで1/1です。それは(私がサイドに落とした)《強迫》ほどの破壊力はありませんが、《強迫》とは違って、仕事を終えた後にこれだけの物が残るのです。当時はご存知の通り、最強デッキはクリーチャーベースであるか、《強迫》に耐性があるか、その両方でした。例えば《適者生存/Survival of the Fittest》デッキの場合、あなたは1ターン目に《強迫》で《適者生存》を落とせなければ、(おそらく2ターン目に)それが場に出て負けてしまうのです。同様に赤単バーンデッキの場合、《強迫》は非常に弱いカードです。あなたが《強迫》で相手の手札を落とそうにも、相手の手札にあるのはせいぜい《ショック/Shock》で、いずれにせよこの《ショック》はあなたに向かって飛んでくるのです。さらに悪いことに、対戦相手が《呪われた巻物/Cursed Scroll》を出していたら、《強迫/Duress》で相手の焼き呪文を取り除くというどころか、相手の焼き環境の構築を早めてしまうだけなのです。

 一方で、《貪欲なるネズミ》の相手の手札に対する妨害は微々たる物ですが、相手の手下に対する妨害にもなるのです。これは《ジャッカルの仔/Jackal Pup》と比べて最強のクリーチャーと言えるでしょうか? 全然でしょうね。《ジャッカルの仔》は《貪欲なるネズミ》に比べてマナが半分でパワーが2倍ですからね。でも、それは確実に《ジャッカルの仔》の妨害をしてくれるのです。《鼠の短牙》もこれと同じようなものです。彼は道場で一番の壊し屋ってわけじゃないですが、彼は相手の前に立ちふさがり、そこを離れる前に一、二枚のカードを抜いてくれるでしょう。《鼠の短牙》は、単体除去の無い、状況をコントロールデッキに対しては最適でしょうが、小型クリーチャーが突撃をかけてくるデッキに対しても、少なくとも速度を遅らせる効果があります。本気プレイヤーが、突進に焦点を置いたデッキに対して速度を遅らせるものを置くことで、どれだけのゲームを勝ちに持っていっているか、おそらく驚かれるかと思います。

 つまり、このネズミ・ならず者は他のネズミと組み合わせることでも強いカードだということです。

 あなたが《鼠の短牙》を2ターン目に出せれば、その後に続くネズミはすべて相手にとってはさらなる痛手となります。単に《鼠の短牙》の起動で毎ターン1枚ずつのカードを落としたり、《騒がしいネズミ/Chittering Rats》でちょっとしたカードアドバンテージを得たりするのではなく、立て続けのターンで二重の二対一交換を迫るのです。この手のならず者齧歯類は同時に地上を混乱に陥れるので、ネズミをどんどん出すこと(そして相手の手札を叩き落すこと)で相手の選択肢を減らし、さらに場の状況を複雑にしていくわけです。

 もちろん、ネズミをどんどん出していき、《鼠の短牙》を起動し続けていけば、必然としてこうなります。

 私は《憎まれ者の傷弄り/Stabwhisker the Odious》のシナジー的なところが非常に気に入っています。

 数年前、“ポックス”と呼ばれていた恐ろしいデッキがありました。“ポックス”デッキは(なんとなんと)《悪疫/Pox》を《Hymn to Tourach》や《Demonic Consultation》と共に使うデッキです。これらのカードは一緒になって対戦相手の手札を破壊し、相手をあっという間に死の淵に追い込みます。なんでそんなに早く死ぬのかって? まあ、《悪疫》使いは相手を《鋼のゴーレム/Steel Golem》や《ミシュラの工廠/Mishra's Factory》で殴ったりするかもしれませんし、《呪われた巻物》でカードを見せてくるかもしれませんが、一番恐ろしい要素は《拷問台/The Rack》です。

 おお、《拷問台》に捕らえられし者が逃げ出すことの何と難しきか。それが複数出てるなんてことになったらまさしく悪夢ですね(2枚目の《Hymn to Tourach》を引けないときに、まあ大抵はそうなんですけど、《Demonic Consultation》を使ってお手軽に見つけてくるんですよ)。問題は、対戦相手があなたの手札を破壊する番になったときです。あなたはすでに相手のアーティファクト・クリーチャーを止めるのに必死になっているような状況で、手札にカードが1枚も無いとしたら、《剣を鍬に/Swords to Plowshares》も撃てるわけないですよ。ですよね? そしてその上に《拷問台》まであろうものなら、相手が自分を倒そうと一所懸命になっている状況でそこから抜け出すのはほとんど不可能でしょう。手札が無ければ、あなたはそれに殺されるでしょう。手札が無ければ、手札を改めて復活させる手段もおそらく持っていないでしょう。《拷問台》を止めるために手札をためるようだと、相手は手下であなたを殺しにかかるか、もっと侮辱的に、それらをとにかく捨てさせるかのどれかで来るでしょう。

 そんなわけで、どっちにせよ最悪なんです。

 私は、《憎まれ者の傷弄り》が単なる《拷問台》みたいな物だから好きだって言ってるわけじゃありません。私が《憎まれ者の傷弄り》を好きなのは、それが《拷問台》2枚分として働くようなものだからです。1枚の《拷問台》で3ライフを奪うのも十分ひどい話ですが、それが3/3の身体と一緒だとすると、カードを捨てることは2倍のダメージになります。

 《鼠の短牙》はそれだけでも多くのゲームを勝ちに導いてくれます。《陰謀団の取調官》と異なり、《鼠の短牙》はインスタントとして働くので、ドロー・ステップに起動し続けることで、理論的には相手の手札をいつまでも0枚にロックすることができます。これも悪くはない状況ですが、勝利を保証してくれるわけではありません――すくなくとも、他の本気プレイヤーに対しては。一方で、《憎まれ者の傷弄り》はそんなでたらめはしません。彼がちょっとバク宙を見せれば、場の状況に素晴らしい一撃をお見舞いします。対戦相手が《鼠の短牙》いささか控えめな1/1よりも大きなクリーチャーを持っていたとしても、彼が《憎まれ者の傷弄り》を抑えられる保証はありません。その場合、《憎まれ者の傷弄り》氏は1ターンに6点なり何なりを直接顔面に叩きつけることになります。

 しかし、この計画で行くのは簡単だなどと言うつもりはありません。《鼠の短牙》が《憎まれ者の傷弄り》に反転したら、強制捨て札の能力はなくなってしまうのです。そして、《鼠の短牙》と《憎まれ者の傷弄り》が1体ずついて、《鼠の短牙》の能力で相手の唯一の手札を捨てさせてしまった場合、あなたの場には突然2体の《憎まれ者の傷弄り》が現れてしまい、(新しいレジェンド・ルールにより)あなたの下には1体も《憎まれ者の傷弄り》が残らなくなってしまうのです。なので、あなたはほんのちょっとだけ注意深く行かなければいけませんが、それもこれだけ強力な効果を扱わなければいけない状況では妥当なところだと思います。

 私は《鼠の短牙》が本当に気に入っています。トーナメントで戦えることが証明されているカードとの相似性とか。そのネズミっぽさや仲間の害獣とのシナジーとか。それが反転して伝説のネズミ・シャーマンとなり、歴代最強ネズミ2体が合体した姿として《ボール・ライトニング/Ball Lightning》よろしく噛み付く様とか。

 しかし、これらは私が《鼠の短牙》を本当に気に入っている理由ではありません。

 私が水曜のコラムニストのもう一人のエイドリアン・サリヴァンと六、七年前に初めて会ったとき、私は彼が実に風変わりな人物だなぁと思ったものです。ご存知の通り、エイドリアンのマジック的個性における数多あるユニークな一面――本当にたくさんあるんですよ。いずれお教えしますけど――の中で、最も強烈なのは彼がカードを逆さまにプレイすることでしょう。変異とかタワーマジックの土地みたいに逆さまにする理由があるわけじゃないですよ……エイドリアンはカードを、対戦相手に良く見えるように、自分からは逆さまの向きにカードをひっくり返すんです。私が知る限り、こういう人物は彼だけですね。

 これまで数え切れないほどの哀れな魔法使いがエイドリアンのカードをひっくり返して、彼から見て正しい方向に直すのを見てきました……しかしエイドリアンは――極めて当たり前ですが――カードを再びひっくり返し、こっちのカードは自分が好きなように並べられるんだ、お気遣いどうも、とでも言わんばかりなのです。彼はカードのタップ状態ははっきりと区別しますし、ライブラリーとか墓地とかその他諸々はとにかく普通なのです。それは相手に対しての礼儀であり、相手に自分がどんなカードを使っているかを理解してもらうための行為なのです。そうですとも。

 ぐしゃぐしゃの髪や長い顔と、それに比較すれば害の無いこの技術は、長い間をかけて蓄積されてきたものです。対戦相手は、《鼠の短牙》が自分に対して《破裂の王笏/Disrupting Scepter》よろしく頭をボコボコやってくる間、その動きにターンに渡って混乱し、やる気がなくなってくるでしょう。こいつは本当に悲しいことです。エイドリアンが一人でゲームをやるなり、翌週の「カード戦術」のコーナーのあらすじを考えるなり間に想定する典型的な相手は、ごちゃごちゃの状況でむなしくもがいている望みの無い相手なのでしょう。

 特に悲しむべき事態は、マジックの偉大なる戦術コラムニストであるエリック・テイラーがエイドリアンとひどい戦いをしたときに起こりました。エリックは自分でもカードを逆さまにして、この本気プレイヤー同士の戦いで巻き返そうとしたのです……しかし、それは役に立ちませんでした。かわいそうなエリックは自分のカードにも混乱してしまい、ついにはゲーム半ばで、少なくともボードの半分だけ我慢すればいいように、カードを直さざるを得なくなったのです。ついでに言うと、彼は非常に頭がよく、かの比類なきパット・チャピンの師匠で、ついでにグランプリのチャンピオンなんですよ!

 しかし、今や《鼠の短牙》のようなカードが出ることで、堕落せしマジックマニアの犠牲者となった多くの無力なプレイヤーが、ついにその正当性を主張できるようになるんじゃないかと思います。エイドリアンもようやく他のプレイヤーと同様にプレイすることを強いられるでしょう。混乱の種ですからね。《鼠の短牙》は相手の手札を全部捨てさせますが、その時には正しい方向を向かなくちゃいけません。カードをすべて正しい向きに並べること――そうしなければ本当はいけないはずなのですがーーで、この痛めつけられてきた魂が、ついには今まで我慢していた紙っぺらで行うべきことを行えるようになるのです。もちろん、その時には手札も無ければ選択肢もほとんど残ってないでしょうが、それはエイドリアンの問題でもなければ、《鼠の短牙》にもまったく関係のないことです。

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