再び訪れた黒の中で

更新日 Making Magic on 2015年 7月 27日

By Mark Rosewater

Working in R&D since '95, Mark became Magic head designer in '03. His hobbies: spending time with family, writing about Magic in all mediums, and creating short bios.

 5週にわたって、13年前に書いた色の理念に関する記事を振り返っている。2週前、白の話(再び大いなる白の道を)をした。先週は青の話(真の青への再訪)だった。そして今週、黒の話をしよう。

 それぞれの色で、2003年に答えたのと同じ6つの質問に、少し付け加えて答えていこう。6つの質問とは、これだ。

  • その色の望みは何か? 最終的な目標は?
  • その目標を達成するために、その色はどのような手段を使うのか?
  • その色が意識するのは何か? その色が表すものとは?
  • その色が嫌うものは何か? その色が否定するものとは?
  • その色が友好色を好み、敵対色を嫌うのはなぜか?
  • その色の最大の長所は何で、最大の欠点は何か?

 それでははじめよう。

その色の望みは何か? 最終的な目標は?

 黒は、力を望んでいる。

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残酷な蘇生》 アート:Miles Johnston

 黒は他の色すべてのことを、それぞれが自分の好きなように世界を見ていると思っている。黒だけは現実主義者であり、ありのままに世界を見ている。個人は、手に入れて守る実力さえあれば何でも欲しいものを手に入れることができる。人生や幸福を支配できる能力を保証してくれる力こそが、もっとも重要なリソースである。

 万人にとって重要なことは、黒が世界を強欲なものにするわけではないと理解することである。世界はもとより強欲なもので、黒はただその中で生き残る手段を知っているだけなのだ。黒には2つの大きな優位がある。1つは、黒は他の誰よりも世界のシステムを理解して受け入れているということ。2つめは、黒は自分に成功の妨げになるような制約を課していないということである。

 黒の理念は「自分の関心事に気を向けるのは自分自身が一番向いている」という非常に単純なものだ。従って、誰もが自分の関心事に気を向けるなら、誰もが誰かに注意されるというシステムが構築されることになる。さらに加えて、黒のシステムでは誰にでも成功の可能性がある。誰もが成功するのかと言われれば、そうではない。しかし、それは黒のせいではない。世界がそうなっているだけなのだ。

 弱い者は敗れる。敗れるから弱いのだ。それを助けるために何かをしても、必然的に訪れる結果を引き延ばし、失敗を広げるリスクを高めるだけである。これは黒の個人的な話ではない。黒は、成功のために必要なことをする。他者がそれと同じことをできないのであれば、その結果を受け入れることになるだけだ。このことを見て、他者が黒のことを冷酷だと評するが、黒にとってはただの実用主義なのだ。

 苦しむ者は存在する。たびたび言うとおり、これは黒のせいではない。生命にとっての必然である。黒は真実を受け入れ、適切に行動する唯一の色であるというだけのことだ。

その目標を達成するために、その色はどのような手段を使うのか?

 黒は、成功の鍵はあらゆる可能性を活かす能力だと信じている。他の色は、できないことの理由を探しているが、黒にはそのような制限はない。黒が何かを必要とするなら、その邪魔になるものは許さない。つまり、タブーがなく、制約がなく、規則がなく、道徳がなく、同情がなく、躊躇がなく、後悔がないということである。自身の予定を進め、さらなる力をもたらす助けとなる何かがあれば、それを手に入れるのだ。

 黒は他者のことを、何かが限界の外にあるという理由を作っていると見ている。黒にはそのような弱点はない。生きることは辛いことだ。個人には、可能性を無視するような余裕はない。代償の多寡に関わらず、あらゆる可能性を活かさなければならない。選択によっては法外なコストがかかることもあるが、コストを支払わなければならなくても必要なことならそれを受け入れることが、成功の鍵である。

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闇の誓願》 アート:Igor Kieryluk

 この理念に基づき、黒は他者が手をつけないようなリソースも利用する。たとえば、黒のもっとも有用な武器の1つが死である。他の色はそのようなものを弄ぶのは「間違い」だと感じているが、黒にとっては、死のように強力なものを使わないことこそが罪なのだ。

 これは、黒が自己中心的な理由の1つである。自分が先に進むために他者を犠牲にする必要があるのだ。自分を最優先にするので、黒は常にこの取引をよしとする。弱者は強者が生き残るための犠牲になるものだ。

 他者は黒の選択を本質的に間違ったものだと評しようとするが、黒は結果は評価によるものではないということを理解している。他者の評価を意識するのは弱点なのだ。

その色が意識するのは何か? その色が表すものとは?

 黒が意識するものとその理由を列記していこう。

 死は、他者がタブー視している、有効で強力な力である。黒はタブーを意識しない。黒には結果が全てであり、死は有効な道具である。従って、死は黒の主な武器となっている。

アンデッド

 死は終わりではなく、時によっては始まりですらある。黒は死だけでなく死者をも利用する。他者は死者を使うことに問題があるが、黒は死者が優秀な召使いになることを知っているのだ。

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アンデッドの召使い》 アート:James Zapata

道徳外

 黒は道徳という概念を信じていないので、黒は道徳を超えているのではない。道徳は弱者が自分よりも強い者を支配し、不正な地位を得ることを正当化するための人工物である。生命は善悪に区分できるものではなく、しなければならないこととする必要のないことに区分できるものである。

畏怖

 全ての感情の中で、黒にとって一番即効性があって簡単に与えられるものが畏怖である。畏怖は、個人に、恐ろしいという感情を呼び起こした状況から逃げ出させようという動機となる。黒はこれを非常に有効な道具と捉えており、しばしば活用する。

悲しみ/抑うつ

 誰かに何かをすぐにさせたいなら、畏怖を使う。誰かに何もしないようにさせたいなら、そのために黒が好んで用いる感情はこれである。

苦痛

 他者が回避する、強力な動機のもう1つがこれだ。単純なことで目的が達成できるなら、なぜそれを使わないのか?

拷問

 黒は効率的な道具を回避したりしない。

 まず、闇の中で何をしているのかは誰も言えない。つまり、黒にとっては悪事を働いて逃げ切ることが容易になるということである。2つめに、人々は闇を恐れるものであり、それだけでも大きな有利になる。3つめに、黒が好んで使う生き物は闇の中で生きている。そして最後に、闇には物事を隠すという意味があり、隠すことは黒にとって目的を達成するために役立つことである。

疾病

 死と同様、疾病もまた他者がくだらないタブーのために回避している有効で強力な力である。有効で、すぐに広がり、他者を弱体化させる。すべてが黒の好む形そのものである。

腐敗/衰退

 物事は時とともに弱まる。黒はそのこともまた自身の欲求に従わせられる自然の力の1つであると発見した。

寄生

 強者は弱者を餌にする。これは微生物だろうが巨大生物だろうが同じである。

昆虫/蜘蛛

 他者は気持ち悪く這い回るものを忌避する。黒にとっては、気持ち悪く這い回ることも使う理由の1つである。

害獣

 不気味で、病気の媒介になる。ウィン・ウィンだ。

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下水の害獣》 アート:Trevor Claxton

汚職

 個人は当然に利己主義だ。黒はその普遍の真理を利用し、自分の助けとするために他者に利益を与える。

不純/汚染

 純粋であることは非常に苦労することだが、汚染は非常に簡単だ。樽いっぱいの汚水にひとしずくのワインを加えても汚水だが、樽いっぱいのワインにひとしずくの汚水を加えると汚水である。少しだけの汚染でも、黒の目的を果たすためには非常に役に立つ。

減少

 何かを作るよりも何かを除くほうが黒はずっと得意である。

偽り

 多くの個人は真実に価値を見いだしている。愚かなことだ。証明された力としての真実の幻は、利用されるべき可能性に過ぎない。

操作

 うまく尋ねたことで何かをしないというなら、うまく尋ねるのを止めることだ。繰り返しになるが、相手の利益を扱うことで自分に必要なように相手を操ることができる。

マキャベリ的思考(「終わりよければ全てよし」)

 手段は問わない。手段を気にする奴らは、能力を無駄遣いしている。理由、主体、方法など、誰が気にしようか。最終的に意味があるのは、結果だけなのだ。

個人主義

 黒の独立的な理念は、個人が自分を意識できるようにするためにどれだけ重要かということを強調している。

破壊(計画的)

 弱者は、時間やエネルギーを多く必要とすることに意識を傾けるものだ。強者は、本当の強みがどこにあるのかを理解している。破壊は創造よりもずっと簡単だ。従って、黒は自分の必要を満たすための道具として破壊を頼りにしている。ただし、赤とは違い、この破壊は近視眼的なものではなく大きな目的の一部としてのものである。

他者を犠牲にすること

 何かを終わらせるには犠牲が必要なことがある。まずは自分以外を犠牲にすることからはじめるものだ。

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潰瘍化》 アート:Johann Bodin

自分の一部を犠牲にすること

 それでも自分を犠牲にしなければならないこともある。黒の黒らしいところは、それがもっとも効率的であれば喜んで自身を犠牲にするということである。

処刑

 死を見世物とすることで、死は他者を動かす力となりうる。

自己陶酔

 自分が一番大切なら、自分に時間やエネルギーを費やさないわけがない。

その色が嫌うものは何か? その色が否定するものとは?

 黒は、他者が生命の基本的な真実を否定していると見たら看過しない。たとえば、自分の目的として、自分のためでなく他人のために何かをする人がいる。黒はこういった個人を愚か者だと考える。危険な愚か者だと。なぜなら、それによって黒の与える動機が失われるからである。畏怖、苦痛、死の恐怖、もし個人がそれらを厭わなかったら、どうやってやらせたいことをやらせるのか?

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天使心の薬瓶》 アート:Chippy

 黒は、人々が自分の利益に反して動くようになる様々な理由に困惑させられている。ある意味では、黒は、黒がやらせたいと思うことを愚かな個人が自分でやりたいのだと信じるようにするため、その理由から学べることはないかと企んでいる。しかし、それらの理由は黒が理念の軸にしている必然性の効果を失わせるものであり、黒を脅かすものなのだ。

その色が友好色を好み、敵対色を嫌うのはなぜか?

 黒は青のことを、必要に応じて操作することや策略を使うことの必要性を理解している仲間だと見ている。黒は、青が情報に価値を置き、情報を目標達成の手段として使っていることを評価している。黒は、青の、感情と切り離して世界を観察すること、他者が理解しないようなことをすることへの情熱を理解している。黒は、青が技術を愛すること、常に目的達成のために新しい道具を探していることを好んでいる。黒は、青がしばしば個人よりも全体のために働くことを嫌っている。黒は、青がしばしば私利私欲でなく学習のために動くことも嫌っている。


 黒は赤のことを、破壊することを厭わないという点で仲間だと見ている。黒は、赤が、判断する上で自分に正直で、自分を最優先にすることを好んでいる。黒は、赤が暴力や苦痛を用いて他者を赤の見方に染めることを評価している。黒は、赤が他人の考えを無視し、自分が正しいと感じることをするということを好んでいる。黒は、赤が近視眼的で反動を理解せずに物事をするということを嫌っている。黒はまた、赤がしばしば愛する他者のために自分を犠牲にすることを嫌っている。


 黒は白のことを危険だと考えている。白は弱者を甘やかし、協力して働くことを推奨する。さらにおかしなことに、個人が自分の利益に反することを納得するように、狡猾な道具として道徳を作った。黒は、もし警戒しなければ黒のこれまでの努力を全て台無しにしてしまう、ずるがしこい敵だと白のことを認識している。白は情報戦に長けており、黒のことを「邪悪」であってどんな犠牲を払っても止めなければならないと確信している。黒は白のやり方の賢さは賞賛しているが、白やその下僕が死に絶えるまで手を止めることはない。


 黒は緑もまた危険だと認識しているが、こちらはもっと微妙なものだ。緑は黒があまり支配していないリソースを利用する。たとえば動物は本能のままに動くので、自分の利益などで簡単に操ることはできない。緑はまた、黒の道具と直接対立するような道具を使っている。生命は死、成長は衰退に対立するものだ。緑は白と同様、全体のことを中心としていて、黒のリソースを圧倒できるようなクリーチャーの群れを組織することができる。最後に、緑の理念は、個人は自分の生命を自分で選ぶことができるという黒の理念と重要なところで対立している。緑の決定論は黒の自由意志の考え方と矛盾するのだ。

その色の最大の長所は何で、最大の欠点は何か?

 黒の最大の長所は、黒が欲しいものを得るために必要なら何でもするという意志である。黒にはタブーは存在せず、そのため黒と戦うのは大変である。黒は、他の色が手をつけられないようなこともする。逆に見ると、黒の何でもするという態度はしばしば黒にとって問題になる。黒は、最終的に黒を傷つけることになることもあるリスクを計算して受け入れる。ある意味では、黒の最大の敵は他の色ではなく黒自身である。黒の欠点にもっとも責任を負う色は、黒なのである。

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反抗する屍術師、リリアナ》 アート:Karla Ortiz

ポップカルチャーにおける、黒の登場人物の例

ラムジー・ボルトン/Ramsay Bolton (『ゲーム・オブ・スローンズ/Game of Thrones』)

 拷問、詐欺、その他言葉にできない行為――ラムジーは欲しいものを得るだけでなく、その中で他人が苦しむのを好んで見ていた。ラムジーは自分のことしか考えないのだ。

サラ・マニング/Sarah Manning (『オーファン・ブラック 暴走遺伝子/Orphan Black』)

 サラは自分自身とその娘のことを最優先にし、自分たちに必要なものを確保するためには何でもする。彼女は嘘もつくし、盗むし、他人の信頼を裏切る。必要なら何でもするのだ。

フィッシュ・ムーニー/Fish Mooney (『ゴッサム/Gotham』)

 フィッシュは欲しいものを欲しがり、自分の側の者を助ける。味方になったように振る舞うが、彼女にとってそれが有利ならば背後からでも襲いかかるだろう。

ヴォルデモート/Voldemort (『ハリー・ポッター/Harry Potter』)

 ヴォルデモートはまさに生き残るために必要なことなら何でもする人物である。倫理も誠実さも良識も存在しない。彼の意識していることは、欲しいものを手に入れることだけである。

ロケット/Rocket Raccoon (『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー/Guardians of the Galaxy』)

 ロケットは盗賊であり、自分のことしか気にしない悪党である。味方についたとしたら、それはロケットの欲しいものを手に入れる助けになると思ったからだ。

リバースフラッシュ/Reverse Flash (『ザ・フラッシュ/Flash』)

 欲しいものを手に入れる(ほとんどは未来に戻ること)ために時間を書き換える必要があれば、リバースフラッシュは関わりのある全ての人の信頼を裏切ってそうする。

バート・シンプソン/Bart Simpson (『ザ・シンプソンズ/The Simpsons』)

 バートは自分のことを他の何よりも優先するだけでなく、そのことで世界に与えうる苦痛や悲しみを意識し、他者の苦しみに大きな喜びを見いだしている。


黒の時代に

 これが黒だ。色の理念について掘り下げているこのシリーズでは、特に諸君の感想を聞かせて欲しいと思っている。メール、各ソーシャルメディア(TwitterTumblrGoogle+Instagram)で(英語で)聞かせてくれたまえ。

 それではまた次回、赤について語る日にお会いしよう。

 その日まで、あなたが時々自分を優先することの重要性を学べますように。

(Tr. YONEMURA "Pao" Kaoru)

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