2024年も閉幕が近づいてきました。ここで今年のMTGアリーナを振り返り、私たちが取り組んだことや学んだこと、そしてこれからのことについてお話ししましょう。

私たちが取り組んだこと

コンテンツ

何と言っても、2024年はカードセット・チームにとって1つの基準となる1年でした。私たちは1年で3,000枚ペースの新規カードを実装し、その中には特に複雑なセットである『モダンホライゾン3』も含まれています。

構築済みデッキの販売

カードセット以外にも、私たちは8月に構築済みデッキの販売を始めました。これは皆さんに新たなデッキやコレクションの供給源をご用意するためのものです。デッキ構築は、特に新規プレイヤーの皆さんや、ヒストリックやブロールといったカードプールの広いフォーマットを探検してみたいという皆さんには難しい部分があります構築済みデッキの販売は、MTGアリーナへの一歩に新たな選択肢をもたらしました。

この施策の素晴らしい点は、皆さんのコレクション状況に応じて価格が決まることです。これにより、デッキを購入していただける可能性が最大限に高まっています。構築済みデッキの販売は比較的新たな施策であるため、私たちは試行錯誤を続けるつもりですが、そこに見出だせる可能性の大きさに心躍っています。

例えばこの施策をきっかけに、過去の『ヒストリック・アンソロジー』製品の再販が実現しました。これまで『ヒストリック・アンソロジー』の価格は固定されており、プレイヤーの皆さんは購入する際に所持済みのカードのことを意識しなければなりませんでした。この手の製品がコレクション状況に応じて価格が決まるようになったことで、より良い体験をお届けできています。

Screenshot of decks for sale in the MTG Arena Store with prorated prices

ゲーム内報酬の新たな受け取り方

『モダンホライゾン3』より、私たちはプレイヤーの皆さんが報酬を受け取る新たな方法を実験しました。それが「超能力蛙の隠れ家」です。これには2つの目的がありました。

1つは、スタンダードでないセットのマスタリー・パス報酬を受け取るかどうかを選ぶ新しい方法を試すことです。昨年の「ユニバースビヨンド」セットはアルケミーのセットとして実装され、スタンダードのみプレイするプレイヤーの皆さんからはそのセットのマスタリー・パスが混乱を招いているとの声が寄せられていました。「超能力蛙の隠れ家」は、スタンダード・プレイヤーの皆さんが感じる混乱を抑えながら、他のフォーマットのプレイヤーにマスタリー・パス風の体験をお届けするための最初の施策でした。

もう1つの目的は、マスタリー・パスの装飾アイテム報酬をプレイヤーの皆さんが好きな順番で受け取れるようにすることです。以前の「マスタリー・ツリー」もセットごとのテーマに沿った楽しい方法でしたが、プレイヤーの皆さんには制限をかけ、私たちのコンテンツ・チームにも手間がかかるものでした。それを「マスタリー市場」に変更したことで、プレイヤーの皆さんは優先して受け取る報酬を選べるようになり、私たちにとっても作りやすくなり、まさに「win-win」の形になりました。

Screenshot of the Duskmourn: House of Horror Mastery emporium, showing sleeves and card styles available for Mastery Orb purchase

装飾アイテムといえば、『サンダー・ジャンクションの無法者』でフレーズ・エモートが再登場しました(よう! 久しぶりだな!)。このセットではフレーズ・エモートの選択肢が増えて、プレイの快適さに関わる改善も行われました。これにより、今後追加予定の機能の基礎部分を築くこともできました(詳しくは後段にてお伝えします)。

プレイ関連

カードやデッキを実装しても、それらをプレイできる場がなくては意味がありません。私たちは『タルキール覇王譚』のリリースに合わせて最高のパワーレベルが設定された構築フォーマット「タイムレス」を導入するなど、楽しく熱中できるプレイ機会のご提供を続けています。MTGアリーナのフォーマットについては……えーっと……(メモを見る)……MTGアリーナ:フォーマット更新情報」記事をご覧ください。

その記事からの受け売りになりますが、私たちは拡大し続ける顧客のニーズに合わせてフォーマットの管理や計画方針を調整し続けています。ミッドウィーク・マジックからアリーナ・チャンピオンシップまで、私たちは幅広くイベントを開催し続け、皆さんそれぞれが楽しめる遊び方を見つけられるよう選択肢を広げています。

アリーナ・ダイレクト

プレイヤーの皆さんのために新しい遊び方を模索している一例が、「アリーナ・ダイレクト」の導入です。2023年末に行われた「Festival in a Box」イベントをもとに作り上げたアリーナ・ダイレクトは、デジタル・イベントでテーブルトップの製品が手に入るチャンスをプレイヤーの皆さんにご提供しました。初動の結果には非常に満足していますが、賞品を獲得したプレイヤーの体験については改善の余地があると認識しています。私たちは今後のアリーナ・ダイレクトの計画を進めながら、問題の是正に積極的に取り組んでいます。

Arena Direct

WPNのイベント

MTGアリーナのイベントに加えて、この数か月にはウィザーズ・プレイ・ネットワーク(WPN)・チームと協働のもと、店舗でプレイすると褒賞を受け取れる新たなイベントを行いました。5月はお近くのゲーム店で3回以上ドラフトに参加すると、次月にMTGアリーナのドラフト参加券を受け取れるキャンペーンを行いました。8月には、お近くのゲーム店でスタンダードのイベントに4回参加すると、MTGアリーナでカードやカード・スタイル、神話パックを受け取れるキャンペーンを行いました。テーブルトップとデジタルのつながりに私たちは満足しており、今後も店舗とデジタルの架け橋となる施策を続けるつもりです。

私たちが学んだこと

2024年は、来年以降のさらなる成長を予感させる学びがありました。中でも大きな課題は、コミュニケーションのさらなる改善とそれによるプレイヤーへの周知の向上です。

プロダクト面では、「超能力蛙の隠れ家」や構築済みデッキの販売は当初見込まれたほどの周知ができませんでした。「超能力蛙の隠れ家」については、隠れ家のアンロックやチケットの交換方法に混乱が見受けられました。とりわけ『モダンホライゾン3』のコンテンツに熱心に取り組むわけではないプレイヤーに顕著でした。私たちはそのコンテンツを求めるプレイヤーへの周知と求めないプレイヤーへの混乱の低減をバランス良く行おうとしましたが、的を外していました。明るい話をすると、私たちはここから多くのことを学んだだけでなく、来年はすべてのセットがすべてのフォーマットで使用できるため、この問題にじっくり時間をかけて取り組めます。

同様に、構築済みデッキの販売についても、価格設定の仕組みについてもっと明確にお伝えするべきでした。私たちはすでに確立されたシステムの中でよく新しいことを試しているため、製品や機能に関しては難しい決断を迫られています。私たちが下すべき決断は基本的に、「この製品や機能を完璧に磨き上げるまで待つ価値があるか?」や「既存の制限を乗り越えた上でプレイヤーに良いものを届けられるか?」といったものです。

デッキ販売ではその後者の道を選びました。その結果デッキの物語を見た目でも味わえる要素は損なわれるとしても、プレイヤーのコレクション状況に応じて割引された価格でデッキがまるごと手に入るという望ましい体験をご提供できたのです。これが正しい道であると私たちは信じていますが、どのような体験が得られるのかをプレイヤーの皆さんにお知らせするためにあらゆることをするべきであると学びました。

特に価格設定の仕組みについては、私たちの発表ではプレイヤーの皆さんが実際にゲームクライアントで目にしたものを説明するには不十分で、混乱を招いたと思います。構築済みデッキの価格設定には3つの段階があります。

  • まずはデッキ内のすべてのカードの価格を合算した基本価格。これは各レアリティの枚数をもとに計算されます。
  • 次にデッキ・タイプに応じて基本価格から割引されたデッキ価格
  • そしてそこからプレイヤーのコレクション状況に応じて割引されたのが、プレイヤー価格です。

混乱の種となったのは、MTGアリーナ内ストアでは「基本価格」と「プレイヤー価格」の2つしか表示できないのに対し、私たちのプロダクト・デザイナーが「デッキ価格」を基準に考えていることです。私たちの発表でもデッキ価格が使われましたが、そこで基本価格を皆さんにお伝えするべきでした。そうすれば、ゲームクライアント内でプレイヤーの皆さんが目にする価格と一致したはずです。ストアに表示される情報をわかりやすくする取り組みは、現在も担当チームが続けています。

イベントについては、「アリーナ・ダイレクト」で賞品を獲得したプレイヤーの体験が不十分であったと私たちは認識しています。私たちは現在、社内だけでなく社外の提携パートナーとも協働の上で、発生した問題の解決に取り組んでいます。しかしながら問題解決は想定よりも難しいことがわかり、アリーナ・ダイレクトの再開催が遅れています。

良いニュースもお伝えすると、現時点で賞品を獲得したプレイヤーの皆さんに関わる問題は解決に向けて前進しており、今後の賞品獲得プレイヤーの受け取り手順の改善にも取り組んでいます。調整が完了次第、改めてアリーナ・ダイレクトを開催します。2025年を迎えるまでにはイベントを行いたいと思っています。

そして、デジタル限定フォーマットについても改善の余地があることを私たちは学びました。私たちはアルケミーの楽しいプレイ・パターンを際立たせるために、セットのリリース計画を中心にアルケミーのデザイン哲学を調整しました。それは現在のところ良い結果が出ていると確認できています。また、私たちはデジタル限定フォーマットのバランスにももっと対応したいと考えており、アルケミーのデザインやデジタル限定フォーマットの管理に集中した新たな役割を担えるように、チームの対応できる範囲を広げていくつもりです。私たちは情熱あるデザイナーというだけでなく、再調整もより柔軟に行えるように体制の変更に取り組んでいます。これについてはまだタイムラインは定まっていませんので、お待ちください。

これから

ではMTGアリーナはこれからどこへ向かうのでしょう?

『パイオニアマスターズ』

12月には待望の『パイオニアマスターズ』がリリースされ、競技シーンに見受けられるパイオニアのデッキが私たちが把握している限りほぼすべてサポートされます。パイオニアを彩る楽しくユニークなカードがすべて収録されるわけではありませんが、今後も「アンソロジー」セットや構築済みデッキの販売など、このフォーマットで楽しめるカードをお届けする手段を探っていきます。余談ですが、この手の話題になるとすぐに出てくる「モダンの導入はいつ?」というご質問にも先にお答えしておきましょう。「現在のところモダンの導入はロードマップに含まれておらず、近いうちに導入する計画はありません。」

カードセット

来年ももちろん、主なカードセットをMTGアリーナにお届けする予定です。来年は各セットに素晴らしいカードが収録されるだけでなく、それらの収録カードがすべて、あらゆるフォーマットで使用できます。特定のフォーマットをターゲットにしたセットをよりよく管理できるツールを作るべく仕事に打ち込んできた私たちですが、プレイヤーの皆さんの好きなフォーマットが何であっても魅力あふれるセットが続々とやってくるのも大歓迎です。

「基本実績」システム

カードセットとは別に、私たちが2025年に実装を予定している大きな機能が「基本実績」のシステムです。実績のシステムは、プレイヤーの皆さんのMTGアリーナへの取り組み方にさらに多くの道をもたらすことでしょう。詳細は近日中にお知らせしますが、ここで簡潔にお伝えすると、私たちはマジックのゲームに勝利することだけに注目した現在の報酬体系を拡張したいと考えています。実績のシステムはデイリー・クエストのシステムに取って代わるものではありませんが、実験や探検、そして楽しむことにも別途報酬をご用意するものになります。実績を獲得すると、新たな装飾アイテムやフレーズ・エモート(『サンダー・ジャンクションの無法者』での成功を受けて再登場です)がアンロックされます。【編集済み】と一緒にあなたが達成したことをお祝いする新たな手段となるでしょう。

基本実績の実装は来年の前半を予定していますが、これは今後の試行錯誤を念頭に置いた基礎の部分です。セット特有の実績や達成方法が幅広い実績など、さまざまなものが用意される予定です。

ソーシャル機能の拡張

基本実績のシステムに続けてチームが取り組む予定の大きなプロジェクトは、ゲーム内コミュニケーション手段の構築や現実世界のコミュニティとの接続に焦点を当てたソーシャル機能の拡張です。現時点ではまだ探査段階ですが、友人グループで交流やプレイを楽しめるツールのご提供やデジタルとテーブルトップのプレイをつなげる手段の改善や、ランキングやトロフィーといったシステムの実装などが今後の展望に含まれています。これらの最初の試作を、2025年末にプレイヤーの皆さんへお届けする見込みです。ソーシャル機能は、将来的にMTGアリーナが3人以上の対戦をサポートするための前提条件となります。

快適さの向上

主要な取り組みとあわせて、快適さの向上もラインに乗っています。詳細な実装日程はまだ最終確認中ですが、近いうちに以下のような変更が行われる予定です。

  • ゴールデン・パック獲得メーターが更新され、スタンダードで使用できるセットのパックを購入すれば進行するようになります。つまり2025年はすべてのセットが対象となります。
  • パックから出現する「スペシャルゲスト」カードを、ゲームプレイ上で意図されたレアリティと一致するように更新します。再録カードにレアや神話レアのワイルドカードを消費しなくても作成できるようになります。ただしこれは、すべての再録カードを初出時のレアリティと一致させるわけではありません。現在のレアリティ基準が反映されます。
  • 構築済みデッキの販売やその他このゲームをすぐに始められる手段については、今後も試行錯誤を続けます。
  • 店舗とデジタルを結ぶ施策については、一部褒賞を何も対応せずとも受け取れるようにすることを含め、改善を続けていきます。例えばプレリリース・パックに同梱のコード・カードは廃止され、代わりにお近くの店舗で開催されるイベントに参加してMTGアリーナにログインすると自動的に褒賞が付与されるようになる予定です。
  • プレイ・チームとプロダクト・チームは連携を続け、『ファウンデーションズ』「Magic Academy」のようなイベントをサポートしていきます。
  • 安定性とパフォーマンスの向上、バグの修正にかかる時間の短縮、その他小さな機能、デジタル限定フォーマットのバランス調整の機会増加など、舞台裏の改善や、私たちのチームや今後の機能をサポートするバックエンド・サービスの実装にも取り組んでいきます。

さらに、私たちが心を躍らせているプロジェクトもあるのですが、それはまだ発表の準備が整っていません。私たちが掲げる目標は変わらず、「誰もがどこでも気軽にマジックを楽しめる」ことです。昨年のチームの歩みはこの目標に向かって進むものであり、私は心から誇りに思っています。この先に待ち受けるチャンスや、より多くのプレイヤーを喜ばせるための取り組みを続けることに思いを馳せると、奮い立ちます。

私たちをここまで連れてきてくれた皆さんに、改めて感謝を申し上げます。どこかのマッチでお会いしましょう。

マジック・デジタル担当エグゼクティブ・プロデューサー、クリス・キリツ